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【コラム】戸塚啓

伸びしろの豊富な世代 U-22

[ 2011年8月18日 06:00 ]

 日本代表の韓国撃破ですっかり印象が薄れてしまったが、先週水曜日の札幌ドームではU-22日本代表と同エジプト代表の国際親善試合も行われた。関塚隆監督率いる日本が、2-1の逆転勝利を収めている。

 日本の失点は、お決まりとなりつつある試合開始序盤のものだった。6月のオーストラリア戦とほぼ同じパターンである。クウェートとの2次予選のアウェーゲームでも、後半開始早々に失点を喫している。

 失点の時間帯に付随して、コンタクトプレーの対応も課題にあげられた。

 この試合ではクウェートの3倍にあたるファウルを冒し、そのうちひとつが失点のきっかけとなった。6月のクウェート戦(ホームゲーム)でも、日本のファウルは相手の3倍以上にのぼっている。悪質なプレーを多発するチームではないだけに、国内と基準の異なるジャッジへの戸惑いが浮かび上がる。

 どちらも試合を重ねることで修正は可能だろうが、より根本的な問題は「試合運び」にある。試合の流れが相手へ傾きつつある時間帯や、はっきりと流れを手放してしまったところで、どうやって自分たちのペースに取り戻すのかがまだまだ未熟なのだ。

 ブンデスリーガなどで活躍したかつての名DFハニ・ラムズィ率いるエジプトは、7月11日に国内リーグを終えていた。調整不足は否めなかった。ラマダン(断食月)の影響で、8人の選手が前夜2時から何ひとつ口にしていなかった。

 さらに加えて、コロンビアでプレーする5人の選手が合流していなかったという。自国開催した09年のU-20ワールドカップ出場メンバーを多く揃えていたものの、ベストのメンバーがベストの状態でやってきたわけではなかったのである。

 逆転勝利は評価できる。1得点1アシストの山田直の活躍も好材料だ。ただ、確固たる裏付けのあった勝利ではなかった。負ける要素は少なかったものの、何となく勝てたという印象である。「こういう勝ち方をすると、選手たちも自信を持ってまた次の準備ができる」(本田圭佑)というフル代表の韓国戦とは対照的だ。

 22歳以下という年齢制限があるために、五輪出場を目ざすチームには「若い」という表現が付きまとう。ただ、世界の第一線で活躍しているロンドン五輪世代は決して少数派ではない。結果が出ているからひとまずOKではなく、もっと高い要求を課すことで、チームの成長を促していくべきだと思う。

 伸びしろの豊富な世代である。それぞれに自信を深めつつもある。少しぐらい無理な要求でも吸収していく許容範囲は、十分にあると感じられるからだ。(戸塚啓=スポーツライター)

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