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【コラム】戸塚啓

韓国戦の海外組招集

[ 2011年7月28日 06:00 ]

 8月10日の韓国戦に向けて、日本協会が海外クラブ所属の18選手に招集のレターを送ったという。そのなかには宇佐美と宮市も含まれており、彼らはU-22日本代表に招集される可能性もあるとのことだ。

 韓国戦はFIFAのカレンダーでフレンドリーマッチの扱いなので、選手を拘束できる時間はW杯予選のようなオフィシャルマッチに比べて短い。海外組がすべて揃うのは、おそらく試合2日前の8月8日になる。

 ザッケローニ監督にすれば、6月のキリンカップで取り組んだ3-4-3の精度に、少しでも磨きをかけたいのだろう。W杯3次予選が9月に控えていることを考えれば、トレーニングセッションを一度でも多くやっておきたいはずだ。トレーニングと韓国戦を、ひとつのセットとして位置付けているに違いない。9月のW杯予選に向けて、チームのコンセプトを再確認する──海外組を呼び寄せたい理由がそこにある。

 ただ、移籍直後の選手や定位置争いをしている選手については、それぞれの立場に応じて招集を見極めるべきではないかと思う。プレシーズンやリーグ開幕直後の大切な時期にチームを離れることで、所属クラブでの優先順位が後退するようなことは避けたい。
これまでのゲームにならえば、韓国戦は交代選手が6人まで認めることになるが、先発出場の選手、交代出場の選手、出場の可能性が少ない選手という区分けは可能だ。3-4-3はともかく、4-2-3-1のベースはアジアカップで構築済みである。トレーニングに力点が置かれるとしても、たとえば残り5分から出場するためにヨーロッパから戻ってくるのは、少しばかり非効率で、少しばかり負担が大きい。

 U-22代表への招集は、今後を見据えていかなければならない。9月21日開幕のロンドン五輪最終予選は、FIFAが定める国際Aマッチデイに開催されない。日本協会に選手の拘束権はなく、宇佐美、宮市、指宿らを招集できるか否かは、それぞれの所属クラブに委ねられる。年齢的には五輪世代の香川も同様だ。

 彼らがチームに加われば、関塚監督はより多くの選択肢を持つことができる。しかし、五輪最終予選で使うことができなければ、8月10日のU-22エジプト戦に招集する意味は薄れてしまう。テストマッチの意義さえも、ぼんやりとしたものになりかねない。

 ふたつの代表で海外組がほぼ一同に集結すれば、ファン・サポーターにはたまらないだろう。しかし、選手それぞれの立場は考慮したいと思う。所属クラブで出場機会をつかむことは、中長期的に見れば代表の利益につながるからである。(戸塚啓=スポーツライター)

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