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【コラム】戸塚啓

J2にプレーオフ導入?

[ 2011年6月17日 06:00 ]

 J2にプレーオフ導入の議論が持ち上がっている。

 Jリーグがクラブ側に示したとされるプレーオフの案は、1、2位が自動昇格し、3位から6位までがプレーオフを争うというものだ。セリエB(イタリア)やフットボールチャンピオンシップ(イングランド)と同じレギュレーションである。

 プレーオフ導入のメリットとしてあげられているのは、リーグ戦の活性化だ。上位2チームがJ1へ自動昇格し、3位から6位がプレーオフで残りひとつの権利を争えば、これまで意味を持たなかった「2位になること」に大きな価値が生まれる。
5位や6位についても同様だ。

 J1昇格のみが“正解”と言っていいJ2の現場には、「3位以内に入れなければ、結局は何位でも変わらない」といった雰囲気がある。4位と5位に大きな違いはない。5位と6位、6位と7位にも、優劣はない。「ひとつでも上の順位を目ざす」のがプロ選手の本能だとしても、「何としても5位になる」とか、「ここで勝てば6位だ」といったモチベーションを、シーズン終盤のゲームから感じることはできない。そうしたコメントを聞くことはできても、言葉に込められる力が弱いというのが、僕自身の肌触りである。観戦する側も同じだろう。去年のJ2で5位や6位になったチームを、果たしてどれぐらいの方が覚えているか。当事者として応援するサポーターはともかく、一般のファンは記憶に止めていない気がする。

 昨年のJ2を例にとると、6位の横浜FCと7位のロアッソ熊本は同勝ち点であり、9位のサガン鳥栖までが横浜FCと勝ち点3差、12位のザスパ草津までが勝ち点6差となっている。プレーオフが導入されていたら、終盤のゲームは大変な盛り上がりを見せたに違いない。重要な意味合いを持つゲームが増えるから、消化試合は減る。メディアの注目度も高まり、新たなファンの開拓や吸収につながるかもしれない。プレーオフはもちろん、プレーオフの出場権を巡る争いから、それなりの盛り上がりが期待できそうだ。

 しかし、僕自身はプレーオフ導入に反対である。

 昨年のJ1でぶっちぎりの最下位に終わった湘南は、J2の3位チームとして昇格したクラブだった。今年のJ1で開幕から10試合白星なしの福岡も、湘南と同じようにJ2の3位チームとしてJ1に復帰した。

 両チームに共通しているのは、絶対的な戦力の不足だ。J1に昇格したからといって、即戦力の外国人選手を獲得したわけではない。現有戦力のレベルアップを基本としつつ、日本人選手を補強してやり繰りをするというスタンスだ。より高いレベルを戦い抜くために少し背伸びをして、それでも身の丈に合った経営を心がけて、両チームはJ1へ挑んだ。だが、湘南はシーズンで3勝しかできず、福岡は順位表の一番下が定位置となっている。3位チームがここまで苦しんでいるのだ。それ以下のチームがJ1へ飛び込んだら、湘南や福岡以上に厳しい戦いが待っていると思う。

 J2の5位や6位のチームともなれば、J1との戦力的な格差は歴然としている。外国人選手を獲得するにも、資金的な壁が立ちはだかる。そうしたクラブが昇格しても、J1勢に立ち向かえないと僕は思う。消化試合をなくしたり、新たなファンを獲得するための努力は、もちろん必要である。だが、現行のJ2にメスを入れるなら、まずは入れ替え戦の復活からではないだろうか。

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