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【コラム】戸塚啓

主役はJ1復帰後1シーズン目の柏

[ 2011年5月27日 06:00 ]

試合中、選手に指示を出す柏のネルシーニョ監督
Photo By スポニチ

 仙台が話題を提供してきた再開後のJ1は、柏が主役に躍り出ている。

 順位はあくまでも暫定だ。ACLに出場している4クラブは、消化試合数が少ない。2試合少ないガンバが未消化分に連勝すれば、首位の柏を抜いて首位に躍り出る。そうは言っても、7試合で13得点4失点という柏の成績は、評価されるべきものと言っていい。

 チームを率いるネルシーニョ監督は、好調の要因に継続性をあげる。

「今シーズンの我々は、95%の選手とスタッフが、昨年から継続して仕事ができている。これは素晴らしいスタートの裏付けとなるポジティブなポイントだ。シーズン前の補強で、質の高い選手も加わっている」

 強化本部の小見幸隆統括ディレクターは、「少し出来すぎですけどね」と苦笑いをしながらも、「J2を戦っていた昨シーズンの途中から、J1で戦うための準備を進めていましたから」と説明する。昨夏の水野晃樹の補強などは、まさに昇格後を見据えたものだっただろう。

 チーム内には激しい競争がある。ここまでチーム最多の4ゴールをあげている北嶋は、「でも、開幕戦はサブでしたし、再開後の初戦はベンチにも入っていませんから」と切り出した。「スタメンで使ってもらって、その試合で得点をあげたとしても、僕自身は安心なんてできません。練習からホントにしっかりアピールしていかないと」

 穏やかな表情には、危機感とともに充実感も浮かぶ。32歳のベテランは、声を弾ませるのだ。

「監督が見てくれているというのは、すごく感じるところで。練習から緊張感があるし、すごくレベルの高い競争ができていると思うんですよ」

 J2からの昇格チームが登場したのは、2000年のシーズンが初めてだった。過去11シーズンの昇格チームの成績を調べてみると、一桁順位を残したチームは7つある。 最近では09年の広島が4位に食い込み、昨年はセレッソ大阪が3位となった。広島のペトロヴィッチ監督、セ大阪のレヴィー・クルピ監督にとって、ともに就任4年目のシーズンだった。

 J1復帰は1シーズン目の柏だが、ネルシーニョ監督のもとで戦うのは3シーズン目となる。J1で戦うための素地は整っていた。シーズン序盤の好調ぶりも、決して驚きではないのだ。ベガルタ仙台の手倉森監督も、今季は就任4年目である。J1では2年目のシーズンということで、ゲーム中の采配に余裕が生まれている。昇格チームが同時に2ケタ順位を記録したのは、これまでに例がない。柏と仙台の今シーズンは、継続的に注目していく必要がありそうだ。(戸塚啓=スポーツライター)

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