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【コラム】戸塚啓

復興のシンボルとしてのベガルタ仙台

[ 2011年4月14日 06:00 ]

練習で手をつなぎながらリフティングを続けるMFマックス・ウィリアン・カラスコ(中央)らベガルダ仙台の選手たち
Photo By スポニチ

 およそ1週間後に再開されるJリーグで、もっとも注目を集めているのはベガルタ仙台だろう。23日の再開初戦に合わせて、クラブには取材申請が殺到しているそうだ。東日本大震災で被災したクラブは、プロ野球の東北楽天とともに復興のシンボルとしての役割を担っている。

 4月3日に千葉県へ移動してキャンプを張ってきたチームは、13日にJ2の湘南と練習試合を行なった。3日前に大学生と対戦しているが、Jクラブと顔を合わせるのは震災後初めてとなる。

 マルキーニョスが震災による精神的ショックで退団したこともあり、これまでのベースだった4-4-2に加え、4-2-3-1のシステムにトライしている。45分×3本で行なわれた湘南戦でも、主力組が出場した1本目は新たなシステムが試された。

 1トップ導入の意図を問われた手倉森監督は、「中盤に力のある選手、チャンスを与えたい選手がいるから」と説明している。関口、梁勇基、松下の3人が1トップの赤嶺を後方支援し、角田と富田がダブルボランチを組む中盤は、指揮官の言葉を十分に裏付ける。ボランチには開幕戦に出場した高橋と経験豊富な斉藤が、サイドアタッカーには代表経験を持つ太田らの人材が揃っていることも、4-2-3-1に実効性を持たせている。

 60分強まで主力がプレーした湘南戦は、1本目、2本目ともに相手を上回る決定機を作り出した。しかし結果は、3本トータルで0-2の敗戦となった。

「守備のところで体力を奪われていた部分がありました」と話したのは、1・5列目で起用された松下である。「攻」から「守」への切り替わりなどで、1トップにふさわしい守り方ができていなかったという。だからといって、不安が先行しているわけではない。
「そのあたりは、話をしゃながら回数をこなしていけばいいと思う」

 サイドアタックを担う関口も、「とくに焦りとかはないです」と言葉に力を込める。「再開までのあと10日間で、調整していきたい。今日も前回の練習試合より確実に良くなっている。一人ひとりがいい距離感で出来ている」と、ゲーム内容を前向きにとらえていた。

 4月4日の練習再開から、チームはオフなしでトレーニングを積んできた。湘南戦に合わせて、コンディションを整えてきたわけではない。トレーニングの延長という位置付けである。敗戦を必要以上に重く受け止める必要はないだろう。手倉森監督は言う。
「点が入らなかっただけ。いいところまではいっている。いまの自分たちが背負っているものの大きさを考えれば、気負いとか、スムーズにいかないところはあるでしょう。23日には、もっともっと厳しい戦いが待っている。練習試合でも悔しい思いをしたのは、自分たちには良かったと思う」

 震災後のリスタートは、他チームに遅れを取った。それでも、「それは言い訳でしかないですから」と松下は語る。静かに、しかしはっきりと明かされた彼の決意は、チーム全体に共通するものと理解していいだろう。

 「他チームより練習できる時間が少なくても、勝てるんだってところを見せたい。ホントにいい結果を出したい。目の前の1試合に対して、熱い気持ちで戦っていきたい」
(戸塚啓=スポーツライター)

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