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【コラム】戸塚啓

チャリティーマッチは復興支援の始まり

[ 2011年3月24日 06:00 ]

チャリティー支援マッチがんばろうニッポン!出場選手決定会見に出席した横浜FC・三浦知良(左)は大東チェアマンと握手し健闘を誓う
Photo By スポニチ

 いったい自分に、何ができるのだろう。3月11日のあの瞬間から、絶えず考えている。

テレビが少しずつ通常の番組を放送するようになっても、被災した方々が震災前の日常を取り戻したわけではもちろんない。本当にたくさんの方々が、いまなお避難所での生活を強いられている。被災地へ思いを馳せるたびに、何もできていない自分が歯がゆい。歯がゆいなどと書いている自分が、偽善的で嫌になる。実際に僕は、何ひとつ役に立てていない。

 3月29日のチャリティーマッチに出場する選手たちも、心の内は複雑だと思う。自分にできることがあれば、とにかく役に立ちたいという真っ直ぐな思いがあり、この時期にサッカーをしていいものかという戸惑いもあると想像する。

 日本代表とJリーグ選抜には、思い切ってプレーしてほしいと願う。彼らのプレーが被災地に勇気や希望を与えられるのかどうかは、いまはまだ分からない。そもそも、被災地の方々がこの試合を観戦できるのかも、はっきりしないところがあると思う。

 それでも、僕ら一般の人間にはできないことが、彼らアスリートにはできる。チャリティーマッチを行ない、サッカー選手が被災地への思いを語ることで、改めて気づかされることがあるのではだろうか。

もう少し、節電に気をつけよう。もう一度、募金をしよう。被災地に不足している物資が届くように、買い控えを心がけよう。そうした行動につながっていけば、チャリティーマッチをする意味はきっとある。

 各クラブや選手個人のレベルでは、震災直後から様々な形で支援が始まっている。J1、J2のクラブだけでなく、JFLや地域リーグなどのクラブも、自分たちに何ができるのかを考えて行動している。

そのうえで、今回のチャリティーマッチは、サッカー界全体による復興支援の始まりとしていくべきだと思う。チャリティーを目的とした試合は今後も継続していきたいし、クラブレベルでの募金活動も同様である。4月23日の再開が決まったJリーグでも、復興支援の輪を絶やすことなく拡げていきたい。

スタジアムに足を運んでくれるお客さんがいて、運営に協力してくる施設管理者やボランティアがいて、もちろん対戦相手とレフェリーがいて、サッカーのゲームは行なわれる。自分たちのチームだけでは、試合は成立しない。草サッカーだって同じだ。周りの人たちをリスペクトする気持ちを、いまこそ復興支援へ結びつけていきたいと思う。(戸塚啓=スポーツライター)

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