×

【コラム】西部謙司

浦和レッズとJリーグの足踏み

[ 2016年6月3日 05:30 ]

<鳥栖・浦和>前半、ショートを鳥栖・林(右)に止められ悔しがる興梠
Photo By スポニチ

 J1第14節のサガン鳥栖-浦和レッズは0-0のドロー。ACLの疲れもあったかもしれないが、浦和の攻撃は迫力不足だった。

 浦和と対戦するチームは5バックで守備を固めることが多い。鳥栖もそうで、深く引いて守備を固めてからのカウンターアタックを狙っていた。

 攻撃時の浦和の配置は後方に2人のDF、中盤のサイドに2人、そしてアンカーのポジションに柏木陽介、前線に5人が張り出す。対戦相手はパスの供給源である柏木をマークし、中盤は3、4人がゾーンで守る。そしてディフェンスラインは5人が並んで迎え撃つ。

 浦和の攻撃のポイントは、相手のMFとDFの間のスペースへつなぐこと。誰もいないスペースを守っている相手のMFの背後に前線から引いてきて、そこへパスをつなげば、5人のDFのうちの1人を引き出せる。ディフェンスラインを動かし、スペースを作り出すことができる。

 ところが、なかなかこの間へのパスが上手く入らない。入ってもフィニッシュへ至らない。これが最大の問題点だと思う。浦和だけでなく、Jリーグ全体の課題かもしれない。

 人数をかけて引いてしまえば浦和が相手でも失点しない。すると当然、対戦相手は5バックで守ろうとする。しかし、あまりにも重心が後ろすぎるのでカウンターアタックのチャンスがなかなか来ない。チャンスが来ても、独力でフィニッシュへ行けるタレントがいなければそうそう得点にならず、結局はロースコアの膠着したゲームが増える。ここまでがJ1の現状だ。もう1つ、Jリーグがレベルアップするには、この均衡状態を打破しなければならない。

 もし、浦和にワールドクラスのアタッカーが2人ぐらいいれば、おそらく状況は劇的に変わる。間へパスを入れるところまでは出来ている。攻撃の枠組みはあるので、プレッシャーの厳しいところで正確にコントロールしてタックルを外せる選手がいれば、得点を量産できるはずなのだ。あるいは、浦和の対戦相手が5人のDFではなく4人で対処できれば、そのぶんカウンターに人数をかけることができるので得点チャンスが増える。どちらかがワンランクアップすることで、もう一方も変わらざるをえなくなり、次のステージに移行する。

 浦和側からすると対戦相手の守備的な姿勢を批判したくなるかもしれないが、むしろ現状の浦和を相手に簡単に失点するようではJのレベルに問題がある。バルセロナも時々、守備的すぎる相手の姿勢を批判することがあるが、それは相手が優勝を争うようなビッグクラブの場合であり、格下の相手に文句を言うことはない。少なくとも、浦和が楽々と得点するよりも現状のほうがまだマシなのだ。攻撃側、守備側のどちらでもいいが、現在の足踏み状態を打破することでJリーグはレベルアップし、次の段階に移行するはずだ。(西部謙司=スポーツライター)

続きを表示

バックナンバー

もっと見る