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【コラム】西部謙司

ボランチ原口への期待と不安

[ 2016年4月1日 05:30 ]

<日本・シリア>後半、ヘッドでゴールを決める原口
Photo By スポニチ

 シリアに5-0と大勝した後、ハリルホジッチ監督は「美しい夜だった」と、選手たちを称えた。一方で、「オーガナイズが崩れていた」と問題点にも触れていた。

 オーガナイズが崩れたとは、攻撃過多でバランスが悪くなっていたという意味だろう。「ブロックを作る。攻めながらブロックをキープしたい」(ハリルホジッチ監督)

  このあたりは、ザッケローニ監督やアギーレ監督と違うところかもしれない。ザッケローニ監督のときも攻撃過多の印象はあった。ただ、あのときの日本は攻撃して押し込むことで守備負担を減らす、いわば攻撃は最大の防御というやり方だった。ハリルホジッチ監督の場合は、ソリッドな守備ブロックを ベースに攻守を展開したいらしい。

 ボール保持が前提だったザッケローニ時代の日本は、長谷部と遠藤のボランチだった。それ以前も、日本代表は中田英や名波といった司令塔をボランチに起用してアジアを制してきた。しかし、守備ブロックに基礎を置くなら少々事情が違ってくる。守備力の高いボランチが必要で、その点でシリア戦の先発が長谷部と山口だったのは納得できる。

 ところが、山口が負傷退場すると交代で入ったのが原口だった。本来はサイ ドアタッカーの選手である。原口はダイナミックな動き、攻撃時の推進力、1対1の強さを発揮して期待に応えた。半面、オーガナイズが崩れた一因でもあった。不慣れなポジションなので仕方がない。適性はありそうだった。

 しかし、 原口が今後ボランチで多くの経験を積めるとは思えない。守備力の高い山口のバックアップが原口だったところに、やりたいサッカーと人選にギャップがあった ように思う。2次予選だったからこれでもいいのだが、最終予選をどう戦うのだろう。2002年の稲本のような役割で原口を生かすのか、他のボランチ候補を探すのか。どういうオーガナイズで望むのか。最終予選までの動向が注目される。(西部謙司=スポーツライター)

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