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【コラム】西部謙司

選手と監督の関連性

[ 2016年1月7日 05:30 ]

レアル・マドリードの監督に就任したジダン
Photo By AP

 ジダンがレアル・マドリードの監督に就任した。クラブのレジェンド登場に期待感が高まる一方で、Bチームのカスティージャを率いただけの経験不足が不安という声もある。

 ジネディーヌ・ジダンは史上有数の名選手だったが、名選手が名監督になるとはかぎらない。ジョゼ・モウリーニョは選手としては無名だった。やはり選手としては全く無名ながら名監督になったアリゴ・サッキは、「良い騎手になる前に馬である必要はない」と言っていた。

 元フランス代表のキャプテン、現在はフランス代表監督のディディエ・デシャンによると、「名選手が名監督になることもあるし、ならないこともある。無名の選手が名監督になることもあるし、ならないこともある。関連性は認められないね」

 ごもっとも。ただ、1つ言えるのは現場から離れすぎていないことが重要だろう。現代のサッカーは仕事が細分化されていて、かつてのようにすべてを1人の監督が仕切るのは難しくなっている。データ分析、体調管理、心理面のマネージメントなど、専門化されているからだ。選手だけでなくスタッフを活用して、チームとして機能させる手腕が求められるようになってきた。名選手でも名監督でも、現場から遠ざかっている期間が長いと浦島太郎になりかねない。

 ジダンはさほど昔の選手ではなく、引退後もコーチ、監督として、経験豊富とはいえないながらも現場を経験してきた。トップチーム就任までのキャリアは、バルセロナの黄金時代を築いたジョゼップ・グアルディオラと似ている。あとは本人の能力次第だろう。

 ちなみに現役時代のジダンはスーパースターだったが無口で大人しく、同じ名選手でも現役当時から監督みたいだったデシャンやヨハン・クライフとは全く違う、職人気質の選手だった。将来、監督になりそうな印象は全くなかった。しかし、Jリーグでも長谷川健太監督や森保一監督が成功を収めている。この2人も職人的な選手で、当時は監督向きにはみえなかったものだ。デシャンの言うとおり、選手と監督には関連性がないのかもしれない。(西部謙司=スポーツライター)

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