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【コラム】西部謙司

カンボジアにはね返されたハイクロス

[ 2015年9月5日 05:30 ]

<日本・カンボジア>前半、本田(4)らイレブンに指示を出すハリルホジッチ監督
Photo By スポニチ

W杯アジア2次予選E組 日本3―0カンボジア
(9月3日 埼玉)
 試合前、カンボジアのシュート練習を見ていて「おや?」と思った。

 クロスボールをシュートする練習をしていたのだが、ときどきシュートではなくてクリアしている。ビブスを着た3人組が2グループあって、この3人組はクロスをクリアする練習をしていたのだ。

「選手たちは日本を恐れていて、攻撃的にプレーするのは無理だった」

 カンボジアのイ・テフン監督が語っていたように、5人のDFと4人のMFで守備を固め、いちおうトップに1人は残しているものの、カンボジアには攻撃する意志が感じられなかった。なるべく少なく失点することだけを考えているような戦い方だった。

  あそこまで引かれると、そう簡単に点はとれない。しかし、相手に守り慣れされてしまえばシンガポール戦の二の舞になりかねないから、日本は立ち上がりから 強引に攻め込んだ。ハイクロスを打ち込んでセカンドボールを狙う、相手はひたすら守る。残り時間数分で1点差ならよくある場面だが、最初からは珍しい。

 カンボジアはこうなると想定していたのだろう。試合直前のクリア練習は、日本戦のために準備してきたことを最後に確認していたのかもしれない。カンボジアは日本のハイクロスをよく弾き返していた。

 ハイクロスを使うなら、日本のFWの人選はそれ向きではなかった。豊田陽平やハーフナー・マイクを起用したほうが威力は あっただろう。ただ、日本はハイクロスを放り込む攻撃がもともと得意ではない。ワールドカップ本大会になったらどうせ通用しないので、あまり真剣に取り組んでこなかった。しかし、ハイクロスが使えないというのは、攻撃の定石が1つ欠けていることになる。まさか2次予選からそれが問題になるとは思ってもみな かったが、今後もハイクロスに頼らなければならないケースはあるだろう。

 それ用のFWを用意するか、それとも吉田麻也を一時的にFWに上げるか、何らかのオプションは持っていたほうがよさそうだ。(西部謙司=スポーツライター)

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