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【コラム】西部謙司

パリ・サンジェルマンと日本の方向性

[ 2014年10月2日 05:30 ]

欧州CL1次リーグで、バルセロナに勝利したパリSG
Photo By AP

 CL2節の好カード、パリ・サンジェルマン対バルセロナは3-2でホームのパリSGが競り勝った。

 パリSGとバルセロナは、ともに国内リーグで突出した戦力を持つ常勝チームだ。どちらも技巧的な選手を揃え、華麗なパスワークと圧倒的な個人技の強豪である。終盤にはバルサに押し込まれたとはいえ、一歩も引かないパリSGのプレーぶりが興味深かった。

 フランスリーグにおけるパリSGの戦力は図抜けている。CLでも2年連続ベスト8入りしていて、いまやヨーロッパの強豪にものし上がった。国内とCLで戦い方が変わることもなく、いわゆる“バルサ・スタイル”である。ところが、今回は相手が本家のバルセロナだった。

 パリSGの立場は少し日本代表の立ち位置に似ている。日本もアジアではチャンピオンで“バルセロナ”だが、W杯では同じスタイルでもっと強いチームがいるという二重構造の中にいる。

 バルセロナやレアル・マドリードなら、国内とインターナショナルでプレーを変える必要はない。国内でもCLでも立場の強さは変わらないからだ。ただ、パリSGの場合は国内リーグとCLではかなり対戦相手に差がある。国内リーグほどの優位性はない。とくにバルセロナが相手となればなおさらである。

 しかし、パリSGはバルサに対しても普段どおりのプレーをした。4-2-3-1でマッチアップは合わせているが、ボールを持ったら自信満々のパスワークで翻弄した。まるでバルセロナ同士が対戦しているようだった。

 サッカーは相手をリスペクトしなければならない。バルセロナぐらい立場が強ければ別だが、自分たちよりも強い相手と戦う試合は必ずある。普段どおりのプレーなど、やりたくてもできない試合がある。そうなっても戦える柔軟性を持つこと、現在の日本代表が目指しているのはそれなのだろう。しかし、選手構成が同じだと仮定した場合、そこまで柔軟にプレーできるものだろうか。

 攻守どちらにも対応できる選手を揃えるのは理想だが、平均点を求めすぎるとチームの強みもなくなってしまう。どちらかに軸足を置くことになる。パリSGはリーグ1でのチャンピオンで攻撃型のチームとしての姿勢を、バルセロナに対しても変えなかった。相手が強いから守備型でやろうとしても、それに適したメンバー構成になっていない。通常の環境(国内リーグ)に最適化したメンバーと戦術に軸足を置くのが合理的だ。

 ただ、終盤にバルセロナに押し込まれると、パリSGは選手を代えて運動量と守備力を強化した。日本が対戦相手や状況に合わせたマルチ対応を目指すなら、交代選手の3人を活用して攻撃型、守備型を上手く使い分ける必要がある。アジアとW杯のギャップを埋めるには、14人で戦うチームであるべきだ。(西部謙司=スポーツライター)

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