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【コラム】西部謙司

黒星発進のマンチェスター・ユナイテッド、香川はどうなる?

[ 2014年8月21日 05:30 ]

プレミアリーグ開幕戦で出番のなかったマンチェスターUの香川(AP)
Photo By AP

 プレミアリーグが開幕、ファンハール新監督のマンチェスター・ユナイテッドはスウォンジーに1-2とホームで敗れた。

 プレシーズンマッチから採用していた3バックシステムで臨むも前半はあまり機能せず、後半から従来の4バックに戻した。3バックはW杯のオランダ代表でも使っていたシステムだ。緒戦でスペインを5-1と撃破して注目された。

 ファンハール監督の3-4-1-2は、守備時に変則的な3ラインを形成する。第一 防御ラインは2トップとトップ下の3人で、センターサークルの外あたりにラインの位置をとる。第二のラインは中央のMF2人と、それより少し下がった位置を基本ポジションとするウイングバックの2人。そして最終ラインがDFの3人となっている。

 守備の特徴は、各ラインの間に位置する相手に対して厳しく寄せて自由にプレーさせないようにすること。主に「間」に入った相手を見られる後方ラインの選手が前に出て潰すか、前を向かせないようにする。とくに中央のMFの後方、いわゆる「ボランチ脇」でパスを受けようとする相手には、必ず3バックの1人が前に出て厳しくチェックする。

 こうした守り方は、スペインのようにパスワークで崩そうとする相手には効果的だ。「ボランチ脇」 へのパスが通って、それを潰そうとしたDFがかわされたとしても、まだ中央には2人のDFが残っているので穴が空きにくいのだ。

 ただ、マンチェスター・ユナイテッドでの開幕戦では、このシステムに合った選手が不足していた。さらにシステム自体もこなれていないようで、ライン間にいる相手を潰しに行って裏をとられ、そのフリーにした相手のパスから先制点を喫している。戦術上のルールと、その場の状況判断の兼ね合いがまだとれていない印象である。新システムを機能させるには新たな補強と、ある程度の時間が必要だろう。

 香川真司は放出候補とも見られていたが、このシステムには合っている。トップ下の選手としてはマタに次ぐ二番手で、マタのパフォーマンス次第では十分に取っ て代われる。ただ、このポジション以外では勝負できないので、チームが新たなMFを獲得してエレーラをトップ下で起用すると香川の位置づけは三番手となるかもしれず、そうなると出場機会はかなり限られてくる。チームが上手くいかないのは、現在の香川にとってはチャンスだ。だが、それも程度問題で、クラブが補強に走れば香川はプレーぶりとは無関係に干される可能性もある。(西部謙司=スポーツライター)

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