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【コラム】西部謙司

本田と香川の逆境

[ 2014年1月27日 05:30 ]

カリアリ戦の前半、競り合うACミランの本田(左)
Photo By 共同

 本田圭佑がACミランに入団、背番号10をつけてすでに3試合でプレーした。入団時の歓迎ぶりも盛大で、まるでメッシやロナウドが来たかのようだった。日本でも祝福ムード一杯で取り上げられていたが、現実はかなり厳しい。

 期待が大きいのは、それだけ現在のミランが苦しい状況にあるからだ。大きすぎる期待は失望も大きくなる。本田がプレーした3試合はすべて監督が違っていた。アレグリ監督が更迭され、暫定でタソッティ、そして新監督はブラジルで現役続行中だったセードルフである。

 セードルフ新監督は本田をトップ下で起用、2列目にカカー、ロビーニョとともに並べて1トップのバロテッリをサポートさせる攻撃的な布陣を組み、初陣を1-0で飾った。しかし、現在のミランは攻守のバランスが悪すぎる。ボールを支配しているわりにチャンスは少なく、相手のカウンターアタックに弱い。負けやすい体質になってしまっている。

 一番の問題点は2人のCEO、ガリアーニとベルルスコーニが不仲だということ。アレグリ監督をクビにしたのはベルルスコーニといわれているが、本来彼女に監督の人事権はないはず。役職と権限が一致しておらず、組織的にかなり不安定な状態と推測される。本田が期待以上の活躍をしたところで、こういう問題は選手では解決できない。

 一方、香 川真司もマンチェスター・ユナイテッドで苦しい時期を過ごしている。ただ、こちらは単純にチームのプレースタイルとの相性なので移籍してしまえばいい。ファーガソン前監督は戦術的なオプションを広げようとして香川を獲得した。そのときはチームが香川に合わせるつもりがあったわけだ。しかし、モイーズ監督はユナイテッドのもともと持っている特徴を継承はしても、香川に合わせるつもりがない。ユナイテッドで香川は活きないし、香川がチームを変えるのも不可能だ。期限付きでいいので相性のいいチームに移籍したほうがいいと思う。

 日本代表にとっては、2人のエースが難しい状況にあるのは悪いニュースだ。何とかコンディションを維持し、W杯で活躍することでそれぞれの突破口を見出せ ればいいのだが。(西部謙司=スポーツライター)

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