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【コラム】西部謙司

継続が生んだ広島の優勝

[ 2012年11月30日 06:00 ]

初のJ1年間優勝を果たし、喜ぶ広島の選手ら
Photo By スポニチ

 広島は静岡、埼玉と並ぶサッカーどころだった。日本代表選手も数多く輩出し、Jリーグの前身であるJSLでは創設から東洋工業が4連覇している。しかし、94年ファーストステージ優勝はあるものの、サンフレッチェ広島の年間王者は今回が初めてだった。

 現在は浦和レッズの監督になっているミハイロ・ペトロヴィッチ前監督の時代から、プレースタイルは一貫していた。森保一監督は就任していきな りのタイトル獲得となったわけだが、継続性は保っていた。

 広島は戦術的にユニークで、攻守でフォーメーションが変化する。GKから組み立てていったり、1トップ2シャドーの3人が中央のコンビネーションで崩すなど、このチームならではの特徴がある。世界的にも似たチームはメキシコ代表ぐらいしか思い浮かばない。

 2位のベガルタ仙台も手倉森誠監督が5シーズン率いている。仙台のプレースタイルは広島とはまったく異なるが、守備の固さとカウンター、高さを生かしたフィニッシュなど、やはり独自の個性がある。

 まだ最終節を残しているが、現時点でサガン鳥栖が3位というのは驚きだ。そして、広島、仙台、鳥栖はいずれもJ2からはい上がってきた経験がある。昨季優勝した柏レイソ ルは、J2優勝の翌年にJ1優勝という快挙だった。このことは、J2のレベルの高さを表しているのではないだろうか。

 継続的な強化で力をつけるクラブがある一方で、大都市のクラブが伸び悩んでいるので、毎年混戦になるはずだ。しかし、リーグ戦自体は面白くなるが、ACLでは勝てなくなっている。ピラミッドの頂点が伸びていない。

 広島はクラブW杯に出場できるので、そこでJリーグの実力を示してほしい。昨季は柏がサントスを相手に良い試合をしたが、今季は優勝のチャンスもある。優勝候補はチェルシーだが、監督が交代したばかり。コリンチャンスは堅実なチームだが、攻撃の中心になるダニーロ、エメルソンは元Jリーガーで、ある程度は手の内もわかる。反対に、広島の特異な戦法は対戦相手に は知られていないはずだ。クラブ世界一を獲れば、Jリーグ全体にとって大きな刺激になる。(西部謙司=スポーツライター)

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