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【コラム】西部謙司

なでしこ、まず初戦勝利

[ 2012年7月27日 06:00 ]

<日本・カナダ>前半、先制ゴールを決め祝福される川澄(中央右)
Photo By 共同

ロンドン五輪女子1次リーグF組 日本2-1カナダ
(7月25日 コベントリー)
 なでしこジャパンがカナダに2-1で勝利した。課題もあるが、初戦としては十分なプレーぶりだ。

 カナダのようなフィジカルで勝負してくる相手には、経験も対策も積んでいる。1失点はしたが守備は安定していた。なでしこのシステムは4-4-2で、一人一人の持ち場がかなりはっきりしている。ポジションの入れ替わりはあっても一時的なもので、主にMFのサイドとサイドバックのポジションチェンジだけだ。コンビネーションが確立されている。プレスのかけ方やカバーリングのポジションなど、動き方に穴がない。とても整理された守備といえる。

 ロングボールに対しては、相手のセンターバックまでは持たせてもいい。ここから蹴られてもほぼ問題ないからだ。ただし、もう1つ前につないできたときには必ずプレッシャーをかけて自由に蹴らせない。ショートパスにはプレスの網を狭めて、同時にディフェンスラインを上げ、全体をコンパクトにしてボールを奪う。相手のセンターバックのところでボールが停滞したときは、前から一気にいく。こうした守備の手順が明確で、手慣れている。

 ただし、整理されているがゆえにバランスを崩すと大きな穴も空く。後半、左サイドバックの鮫島が敵陣深くまで攻撃した後、日本の左サイドは無人状態になっていた。本来は鮫島のパートナーである川澄がカバーしているはずなのだが、攻撃の流れの中で川澄は中央にいたからだ。カナダのカウンターアタックで日本の左サイドを一気に通過されそうになったが、澤がいち早く危険を察知して戻り、事なきをえた。

 予想外のピンチを救ってくれた澤は、さすがに頼りになる存在だ。カナダ戦では鋭い読みと体を張った守備で貢献し、先制点のきっかけとなった大野へのアウトサイドを使ったパスも見事だった。澤のコンディションが上がってきたのは心強い。

 守備は良かったが、攻撃面はやや物足りなかった。まだ何人かの選手の調子が上がりきっていないのか、最後の崩しのところでアイデアが少ない。つなぎの段階でのミスも多かった。今後もフィジカルの強力な相手との試合が続く。崩されていなくても失点する危険はあり、1失点は覚悟しなければならない。確実に2点とるためには、もう少しチャンスの数を増やしていきたい。(西部謙司=スポーツライター)

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