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【コラム】西部謙司

3-4-3の賞味期限

[ 2012年5月5日 06:00 ]

日本代表千葉合宿で槙野(右)と競り合う清武
Photo By スポニチ

 W杯ブラジル大会のアジア最終予選が6月に始まる。まだ1カ月も先とはいえ、その間には親善試合が1試合あるだけ。そこで先週、国内組を集めて3日間の短期合宿が行われた。

 合宿のテーマは3-4-3システムの習得だった。このやり方が初めてというメンバーもいて、最終日の明治大学との練習試合での出来もいまひとつ。相変わらず、実戦で投入するには不安があるという試作品レベルである。

 ザッケローニ監督にとって3-4-3はトレードマークともいうべき戦術だ。現状の代表は4-2-3-1を主力システムとしているが、3-4-3もオプションとして加えたい意向を持っている。

 3-4-3の利点は攻守ともにパターン化しやすいこと。簡単にいうと、守備では相手から強引にボールを奪うのに向いている。攻撃では、相手のポジショニングを混乱させて攻め込むスペースを作りやすい。この2点が特徴である。つまり、どうしても点がほしいときや、試合のリズムを強引に引き寄せたいときに、切り札として使える。

 ところが、所属チームで普段から3-4-3でプレーしている選手がいない。たまに代表で集まってトレーニングしたり、試合で試したりといった程度では、なかなか習熟しないのが難点だ。ザッケローニ監督のイメージでは、3-4-3はあくまで攻撃的なオプションのようだから、予選に間に合わせたいのだろうが、なかなかモノにならない。

 W杯本大会に関していえば、3-4-3よりも守備を重視した4-1-4-1などのシステムのほうが重要だと思う。スペイン、オランダ、ドイツ、ブラジルなどと同組になる可能性は高く、そうした相手にはボールを支配される展開も予想されるからだ。また、勝ち上がっていけば、いずれはそういう試合になる。リードされた場合の3-4-3もあったほうがいいのだろうが、それよりも失点しないで守りきるプランのほうが現実的だ。

 ただ、アジア予選で日本が攻め込まれる展開はほとんどないだろう。予選に関しては、攻撃のオプションが重要なので、3-4-3優先は理解できる。しかし、それも使えないのでは意味がない。本当のところ、もうタイムリミットは過ぎているのではないか。(西部謙司=スポーツライター)

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