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【コラム】西部謙司

北朝鮮とロングボール

[ 2011年11月18日 06:00 ]

W杯アジア予選の北朝鮮戦で、パク・ナムチョル(左から2人目)から決勝のヘディングシュートを決められた日本
Photo By スポニチ

 W杯3次予選、平壌での北朝鮮戦は異様な雰囲気だった。異様に感じるのは、こちらが見慣れていないからで、マスゲームじみた応援や、スタンドを埋めた人々の表情が珍しく感じられたのも、おそらくこの国の情報が入っていないからだろう。

 北朝鮮の戦法もいまどき珍しいぐらいの、ロングボール一辺倒だった。ところが、それがけっこう日本には有効で、ほぼ北朝鮮のリズムで試合は進んでいった。10番のパク・ガンリョンの空中戦の強さは抜群、Jリーグでは敵なしの栗原勇蔵があっさり競り負けていた。

 フィジカルの強さでは負けていないチョン・テセを前半で引っ込めたのは驚いたが、それから3バックに変更して後方で数的優位を作り、最後尾から前線へのロングボールをいっそう徹底させて日本を守勢に追い込んだのは、見事な采配だったと思う。

 日本はなかなか試合の流れを変えられなかった。本来なら、持ち前のパスワークでボールを確保して、北朝鮮を押し込んでしまえばよかったのだが、遠藤保仁の欠場が響いたのか、ゲームのテンポを落とすことが上手くできていなかった。

 思えば、アジアカップ決勝のオーストラリア戦でも似たような展開になっている。あのときはオーストラリアの空中戦を際どくしのぎ、李忠成の一発で勝負をつけたが、やはりなかなか日本のリズムに変えることができないでいた。

 北朝鮮やオーストラリアのような、ある意味古くさい戦法を採るチームは珍しくなっているものの、まったくなくなったわけではない。W杯南アフリカ大会では、ニュージーランドが同種のスタイルで強豪国を苦しめていた。どうも日本はこのタイプが苦手なのかもしれない。(西部謙司=スポーツライター)

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