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【コラム】西部謙司

問われる守備力

[ 2011年10月6日 06:00 ]

 W杯3次予選のタジキスタン戦、そのテストとして行われるベトナム戦で問われるのは、日本の守備力である。

 この2試合で、日本はボールを支配して相手陣内に押し込む展開になる。ボールポゼッションは70%前後まで上がるのではないか。ただ、引いて守備を固めている相手から得点を奪うのはそう簡単ではない。

 日本が第一に考えるべきは、相手を相手陣内から出さないこと。攻守の切り替えを早くして、失ったボールをただちに取り戻す守備をする。自陣から出られなくなった相手チームには得点のチャンスがないばかりでなく、自陣内でミスをする危険が高まり、奪った直後に奪い返されるので守備の組織も綻びやすくなる。つまり、日本はきれいに崩さなくても、相手のミスで点をとれる状況に持っていける。

 前提になるのは、日本が一列目以外でボールを失わないこと。FWのラインで奪われても、ボールより後ろには8~9人の選手がいるので、すぐにボールにプレッシャーをかけ、その周囲も完全にマークすることができる。

 敵陣内での守備のキーポイントは、前進守備と最短時間のボール奪取。前向きにプレッシャーをかけていくほうが、守備のやり方としては強度が増す。ただ、それができないとき、対面した守備者が後退しながら守る状況も発生する。そのときに全体がずるずると引いてしまうのではなく、ボールより敵陣側の選手、例えばFWがボールを持っている相手選手の背中側からプレッシャーをかけていけば、前進守備ができない場面でも最短時間で奪い返すことはできる。相手陣内で厳しい守備ができれば、日本のリズムで試合を進められるだろう。

 一方、わざと相手にボールを持たせるという手もある。敵陣でのプレスではなく、FWはハーフラインまで引いて、相手を前に引っぱり出す。こうすると相手のディフェンスラインの裏にスペースができるので奪った後に攻めやすくなる。Jリーグでは、こちらの守り方のほうが主流なので、敵陣プレスよりも選手はやりやすいだろう。ただ、相手がベトナム、タジキスタンならば、おそらく敵陣でプレッシャーをかけたほうが有効だと思う。(西部謙司=スポーツライター)

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