×

【コラム】西部謙司

18歳からの強化プラン

[ 2011年8月25日 06:00 ]

 ユニバーシアードで日本大学選抜が優勝した。この大学生の大会での日本は、W杯のブラジル並に強くて優勝は5回目だ。

 日本の大学生が強いのは、本来ならプロに行っている素材が大学に進学しているからだろう。ジュビロ磐田は今季、山田大記など大卒選手3人をチームの軸に据えて上手くいっている。一方、大学生の年代にあたるJリーガーには、なかなか試合出場の機会がない。18歳でJに加入する選手は、いわばその世代で最高の素材だ。ところが、Jに入ったはいいが試合出場の機会は少なく、公式戦の経験をほとんど積めない。むしろ、大学へ進んだ選手のほうが公式戦の数も多く、鍛えられてからJに入ってくるので即戦力として活躍しているという例も多い。

 大学でスケールアップしてJで活躍するのはいいことだが、半面、Jで出場機会のない逸材をどうにかしなければいけない。

 要は、J1が抱えている有望な若手に出場機会を与えればいいのだが、J1となれば選手層も厚い。そこで、J2に貸し出せる環境を作ればいいのではないか。例えば、J2の出場選手に年齢制限をつける。21歳以下の選手が必ずピッチ上に3人以上いなければならないなど、若手を育てるためのルールを作る。同時に、J1の有力な若手選手は「指定強化選手」として、J2に貸し出す場合には給与の一部を日本協会とJリーグから資金援助する。J1が貸しやすく、J2が借りやすくする枠組みを作りたい。

 日本の若手選手を獲得するヨーロッパのクラブが増えた。日本の若手選手に才能があるという理由だけでなく、獲得費用が安いからだ。選手も海外移籍をしたがるが、必ずしもその選手にとって良い環境が待っているわけではない。ただ、同じベンチに座っているならヨーロッパのほうがまだいいかもしれない。

 プロは実力勝負、本来は年齢に関係なく実力でポジションを獲得すべきである。しかし、日本の場合は意識して若い選手を育てる土壌を作ったほうがいい。育成の場として大学は機能している。プロの若手選手が公式戦で勝負できる環境を作りたい。(西部謙司=スポーツライター)

続きを表示

バックナンバー

もっと見る