【コラム】金子達仁 2011年
日本にも欲しい「地域活性化スタジアム」
高さはおよそ300メートルほどの円錐(えんすい)形。頂点部分は病院になり、ホテル、スポーツクラブ、商業施設などが上層部には収まる。もちろん、下層部に位置するスタジアム部分も、エアコンが完備――。前回も書いたが、ドイツの建設会社で見せてもらった、カタールに作られる予定の最新型複合スタジアムの外観と概要は、言葉を失うほどに未来的だった。完成した暁には、サッカースタジアムとしてだけでなく、建築物としての魅力で世界中の観光客を呼び寄せることになろう。
ちなみに、総工費は20億ユーロ程度だという。
額を聞いた時には、あまりにも天文学的な数字にしか思えなかった。20億ユーロと言えば、空前の円高が進んだ現在でさえ、2000億円をはるかに超える巨費。東京スカイツリー総工費の約3倍である。ゆえに、これは潤沢な資金を誇るカタールゆえの話であって、日本には到底縁のない夢物語だとオートマチックに思い込んでしまっていた。
もちろん、その考えは基本的にいまも変わらない。たかがスタジアムに2000億円も出すという発想は、いまの日本人には皆無だろう。だが、2000億円という数字に対する考え方は、ここ1週間でいささか変わりつつある。
八ツ場ダム建設にかかる金額が4600億円程度だと知ってからは。
もちろん、治水面、安全面などで不可欠な場合もあるダムと違い、スタジアムは所詮(しょせん)、娯楽のためのものである。なくて困る人、物足りなさを覚える人はいても、命を落とす人はいない。ただ、ダムを建設する理由のひとつに、地域に対する経済効果というものが含まれているのであれば、複合型スタジアムの建設は、新たな選択肢の一つとなりえるのではないか。
スタジアムを作るには、道路を含めた周囲のインフラを整備しなければならない。ホテルや病院を併設するスタジアムであれば、決して少なくはない雇用も捻出される。老人ホームを併設し、地域の活性化を計っているスタジアムもある。そして、ダムと決定的に違うのは、スタジアムには定期的な集客能力がある、ということである。
大正時代に「東洋一の野球場を」とのコンセプトで建設された甲子園は、21世紀に入ってもなお、高い魅力と集客能力を保ち続けている。新しいものは古くなるが、いいもの、高い志によって作られたものは、古くならない。いまはまだ無理にしても、いつかは日本に、地元を元気にするための手段としてスタジアム建設を考える政治家、官僚が出てきてくれたら――。それが、来年へ向けての夢である。(スポーツライター)
[ 2011年12月29日 ]
- Webtools & Bookmarks
- Tweet
バックナンバー
- もはや都市計画の域 欧州スタジアム [ 2011年12月22日 ]
- 忘れえぬソクラテスとの6時間 [ 2011年12月8日 ]
- 歴史的J最終節 [ 2011年12月1日 ]
- 五輪へ前進もシリアの危険な破壊力 [ 2011年11月28日 ]
- 大津にあふれていた別格の自信 [ 2011年11月24日 ]
- 脱お坊ちゃまへ ホームを出よ [ 2011年11月17日 ]
- 最終予選に不安残すザッケローニ体制の“超内弁慶” [ 2011年11月16日 ]
- 劣悪なピッチへの適応に成長を見た [ 2011年11月12日 ]
- あまりに劇的で残酷 四国ダービーの一戦 [ 2011年11月10日 ]
- 柏が優勝すればJ2の志も変わるかも [ 2011年11月3日 ]
- 特別なナビスコ杯決勝 トルコのため祈りを [ 2011年10月27日 ]
- 東南アジアがJリーグに興味を持ったら [ 2011年10月20日 ]
- 「天皇杯の力」生かすためのシステムを [ 2011年10月13日 ]
- 憲剛「本田の穴埋め」以上の出来 [ 2011年10月12日 ]
- 前半の収穫ブチ壊した後半は「最悪」 [ 2011年10月8日 ]
- 「バルサ型」脱却 ビエルサ監督の挑戦 [ 2011年10月6日 ]
- 賛成 J2のナビスコ杯参加 [ 2011年9月29日 ]
- 清武“将軍”中心に度肝抜かれた開始15分 [ 2011年9月22日 ]
- なでしこ 五輪のカギは新たな「思い」 [ 2011年9月15日 ]
- ザック監督が「アジア」を知ったことが収穫 [ 2011年9月8日 ]
- これは苦戦ではなく「グランデ・ビットリア」である [ 2011年9月3日 ]
- 北朝鮮戦 大きな意味を持つ遠藤の力 [ 2011年9月1日 ]
- 新参者の「財力」か名門の「哲学」か [ 2011年8月25日 ]
- 「美しく勝つ」国になれるかの分水嶺 [ 2011年8月18日 ]
- こんな美しい日本 生まれて初めて見た [ 2011年8月11日 ]
- アトランタの悔いが闘う男に変えた [ 2011年8月5日 ]
- 日本はノルウェーのために祈ったか [ 2011年8月4日 ]
- スポーツは道具ではなく「権利」 [ 2011年7月28日 ]
- 世界中に記憶されるなでしこの存在 [ 2011年7月21日 ]
- 伝説的なチームになったなでしこ [ 2011年7月14日 ]
- 「カニ」の殻破ったヴェルディ育ちの代表 [ 2011年7月7日 ]
- 驚くべき速さで変わる日本人選手の意識 [ 2011年6月30日 ]
- 収穫はアジアを戦うための「新しい物差し」 [ 2011年6月25日 ]
- U−17W杯に見る日本=強豪の図式 [ 2011年6月24日 ]
- 「スタジアム力」で差をつけられる日本 [ 2011年6月16日 ]
- 「内向的で勤勉」ならできるバルサ超え [ 2011年6月9日 ]
- 選手自らの「修正」を評価したい [ 2011年6月8日 ]
- アジア杯Vが可能にさせたカメレオン布陣 [ 2011年6月2日 ]
- ケルン新監督は槙野の運命を変えるか [ 2011年5月27日 ]
- 認識のズレが生んだ南米選手権辞退 [ 2011年5月19日 ]
- “あと一歩”の5連敗どう動く福岡 [ 2011年5月12日 ]
- バルサに“一矢報いた”モウリーニョ監督 [ 2011年5月5日 ]
- 1年の成長度では香川より内田が上 [ 2011年4月28日 ]
- 南米選手権もう一度「不参加」検討を [ 2011年4月22日 ]
- J開幕日を動かさないのはなぜか [ 2011年4月14日 ]
- 南米選手権はJの犠牲なしで参加を [ 2011年4月7日 ]
- カズの奇跡の裏にはきっと小笠原がいた [ 2011年3月31日 ]
- totoのキャリーオーバーを復興資金に [ 2011年3月24日 ]
- 世界も信じる「絶対に」甦る日本 [ 2011年3月17日 ]
- 別次元の速さ 永井が変えた結末 [ 2011年3月10日 ]
- 名古屋は“巨人的な存在”になれるか [ 2011年3月3日 ]
- 長友、岡崎が劇的に変える日本の育成法 [ 2011年2月24日 ]
- それでもなお相撲に学ばせた協会の英断 [ 2011年2月17日 ]
- 岐路に立つJ 欧州とのギャラ格差 [ 2011年2月10日 ]
- 新時代に突入 アジア杯と日韓関係 [ 2011年2月3日 ]
- 指揮官も成長させた価値ある大会 [ 2011年1月31日 ]
- 弱点パワープレー克服へ決勝は「最良の教材」 [ 2011年1月27日 ]
- アラブ諸国W杯予選で日本の脅威に [ 2011年1月23日 ]
- 最強日本を生む“二大勢力”の融合 [ 2011年1月20日 ]
- “次の段階”への分岐点となった試合 [ 2011年1月19日 ]
- 長谷部の笑顔がもたらした岡崎のPK [ 2011年1月15日 ]
- 高校サッカー大型選手の育成に力を [ 2011年1月13日 ]
- 「タテへの意識」ドイツ組の成長に満足 [ 2011年1月11日 ]
- 大学サッカーに「大化け高校生」枠を [ 2011年1月6日 ]





































【宝塚記念】3強に明暗
「ローン、今すぐ借りたい!」