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どうなる新生OM 謙虚にスペクタクルは可能か?

マルセイユを買収したアメリカの大富豪フランク・マッコート氏
Photo By AP

 フランスの人気ナンバーワンクラブ、オランピック・ド・マルセイユ(OM)が、轟音をたてながら激動の7日間を終えた。

 アメリカの大富豪フランク・マッコートがクラブを正式買収したのは10月17日。新オーナー到来とともに、ジャック=アンリ・エロー新会長も正式就任した。

 注目が集まるなかマッコートは、「今後4年間で2億ユーロを投入する」と約束。カタールがパリSG(PSG)に投入した額には及ばないものの、旧OMオーナーのドレフュス家が20年間で投入した額より多い計算になる。

 スポーツ目標については、3つ挙げた。

 「目標1は、リーグアンで毎年トップ3に入ること。目標2は、しばしばリーグ優勝すること。目標3は、チャンピオンズリーグを制覇すること。順を追ってそこに到達しなければならない」

 前回このコラムで紹介したように、フランスで最も熱いことで有名なマルセイユ・サポーターたちは、諦めモードだった。美辞麗句もすぐには信用できない状態。ましてチャンピオンズリーグ(CL)なんて、「夢のまた夢…」と溜息が出たに違いない。ただ旧オーナーのマルガリータが去ってくれた点だけは歓迎した。フットボールにもOMにも愛着がなく、出費ばかり気になっていた彼女は、醜いコスト・キラーと化していたからだ。

 メディアや国民の反応も、“安堵”だった。とりあえず国民財産のOMが救われたためで、「手持ちの監督と選手で何とかもちこたえながら、まずは実力あるスポーツ・ディレクター(SD)を探し、次いで冬のメルカートで新監督を招聘して選手も少し補強。今季はそれで乗り切って、本格始動は来夏からだ」、と胸を撫でおろしたのである。

 ところが晴天の霹靂が起きた。

 マッコートが21日、間髪を入れずルディ・ガルシア監督を招聘したのだ。フランスじゅうにビッグサプライズが広がった瞬間だった。

 リールをリーグ優勝とフランスカップ制覇の2冠に導き、あのASローマでも実力を発揮した監督だけに、フランス人の喜びはなかなかのもの。タイミングが絶妙だったため、メディアもマッコートに一目置く結果となった。日陰で黙々と貢献してきたフランク・パシ監督にとってはむごい仕打ちだったが、クラブは彼の長い貢献に感謝の意を表明し、ガルシア体制に突入した。

 震撼だったのは、23日がクラシコ(フランスダービー)だった点。PSGとOMが激突する因縁の対決である。つまりガルシア新監督には、このビッグカードを前にたった2日しか準備時間がない。いや、酒井宏樹によれば、事実上1日しかなかったという。たった1日で戦術と選手チョイスを決断しなければならなかったわけだ。しかもPSGに惨敗でもすれば…。想像するだけで怖いシナリオというものである。

 ところが今度は、晴天の霹靂ならぬ、雨天の霹靂が起きた。

 23日、パルク・デ・プランスには、煙るように氷雨が降り注いでいた。そこに出現したOMの布陣は5-3-2。4-2-3-1で戦っていたパシ時代にはあり得なかった、まったく新しいシステムだった。この戦術面と並んでもうひとつ目を引いたのは、選手チョイス。パシ時代に干されていたロランドを、思い切って3CBの中央に起用したのである。そしてそれらが奏功した。

 天下のPSGを相手に0-0!

 「たかが0-0」などと笑ってはいけない。なにしろ、あのズラタン・イブラヒモビッチがパリに到来して以降、OMは5年間もPSGに勝ったことがなく、ドローさえ11試合ぶりなのである。

 PSGは、ワールドクラスの豊富なタレントで、攻めても攻めてもOMの守備ブロックに阻まれて得点することができなかった。ロランドを中心にしたOMの守備陣は、永久に続くのかと思うほど長い守備戦に耐え、とうとう敵にホームで赤恥をかかせたのだった。いわばOMはPSGに冷水を浴びせたのである。酒井もこれによく貢献した。

 「どうせ木端微塵にされる」と諦めていたマルセイユ・サポーターは、「ほとんど奇跡」と苦笑しつつも、小さな誇りを取り戻したところだ。ガルシア監督にたいするメディアの評価も、天を突き破った格好。たった1日で戦術眼をみせつけ、選手たちを一丸に団結させたからである。順位もじわりと上昇し、リヨン(10位)と勝ち点差で並ぶ11位につけた。

 さて、ここからどう展開するのだろうか。

 ガルシア監督は試合後の記者会見で、「ヨーロッパリーグ(EL)には到達したい」と断言。25日現在5位につけるギャンガンとの勝ち点差は4ポイントだから、十分に可能と言えるだろう。

 一方OMスポーツ・コーディネーターであるバジル・ボリは翌24日、「フットでは何だって起こり得る。すぐにCL制覇などとは言わないが、来季のCL出場ならプルコワ・パ(ホワイ・ノット)?」(テレビのラ・シェーヌ・レキップ)と発言し、話題を振り撒いた。

 ランキングがニース(1位)、モナコ(2位)、PSG(3位)という現時点では、「またすぐ舞い上がって~」と言いたくなるが、大志を持った方がいいのも事実。とはいえ着実に勝利を重ねることが肝要だろう。

 PSG相手に“シュート0本”だったことも忘れてはならない。“0シュート”というのは、データ会社OPTAにとって、3900試合なかった統計だそうである。3900試合!それだけ守りで精いっぱいだった、ということになる。

 もっとも、ガルシア監督の哲学は、攻撃的でスペクタクルなスタイル。クラシコで見せた5-3-2を続けるとは考えにくい。守備に徹するばかりにはならないだろう。果たしてこれからどんなシステムとスタイルを導入し、どんなメルカートを展開するのか。酒井も、力の見せどころである。

 いつも派手に舞い上がって派手に墜落するOM。「謙虚にスペクタクル」というオクシモール(矛盾する2つの概念を結合させて強力な意味をもつ一つの言葉にする)が実現できたら、そのときこそ“奇跡のOM”になるのかもしれない。(結城麻里=パリ通信員)

[ 2016年10月27日 11:30 ]

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