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【コラム】海外通信員

技術の高さで欧州サッカー界に挑む日本人トレーナーの可能性

[ 2016年9月30日 05:30 ]

欧州で活躍している日本人トレーナーは増えそうだ
Photo By 提供写真

 日本サッカーの発展には、世界の強者たちが集結するリーグにより多くの選手たちが所属し活躍することが不可欠であると言われ続けてきた。

 Jリーグがはじまり四半世紀が経過し、数十人の日本人サッカー選手たちが海外リーグに所属していることは日本サッカー全体の大きな功績と言えるだろう。

 しかしながら、個人選手の単発的な成功だけではサッカー界全体の恒常的な発展に繋がりにくい。これからの数十年は指導者、チームスタッフ、経営者たちが、選手と同等またはそれ以上のレベルで活躍できる人材が求められている。

 サウサンプトンに所属する日本代表DFの吉田麻也選手のパーソナルトレーナーを務めている木谷将志氏は、日本で培った繊細な治療技術を駆使し世界一流のリーグで腕を試そうとしている。

 木谷氏は国内の接骨院での業務でサッカー選手、プロ野球選手、力士、テニス選手などをこれまで十年以上サポートしてきて、今春独立した。ここ数年間は、定期的に渡欧し日本人選手を中心に治療やケアを行ってきたが、プレミアリーグに所属する他国の選手にも施術をする機会が増えてきており評判は広まっている。

 現在はヨーロッパのクラブや個人選手との契約交渉の段階にあるが、欧州サッカー界で日本人トレーナーが活躍できる可能性は十分にあると木谷氏は語ってくれた。

 「トレーナーの仕事内容は様々ですが、私が主に行っていることは選手がケガをした際の治療や日頃の身体のメンテナンスです。ヨーロッパで活躍するトップレベルの選手を数年間施術してきましたが、日本人トレーナーがすぐれている点は施術の技術の高さにあると思っています。本やDVDで学ぶことができない職人気質というか、繊細で感覚的なものに響く施術ができます。私が行っている施術は、選手がもとめている身体の変化に対してピンポイントで施術し、そこに関連する関節や筋肉に対してアプローチをかけています。ヨーロッパのクラブチームや選手個々の話を聞く限りでは、こちらでは主流なやり方ではないようです」

 ヨーロッパのクラブでは整形外科的な考えの影響が強いため、ある個所をケガするとその個所に対して集中的に治療を行う。それに対して木谷氏が日本で学んだやり方は東洋医学的な要素が多く含まれており身体全体で問題を捉えるようだ。

 先日、イングランド代表のサム・アラダイス監督はチームスタッフに日本人トレーナーの山本孝浩氏を加えた。近年は、アーセナルやイタリア代表などで活動していた山本氏は、トレーナー界の先駆者として存在しており、日本人トレーナーの可能性を広げている。

 木谷氏の治療もプレミアリーグの選手間において評判は高まっており、施術によってより効果的なパフォーマンスに繋がっていると選手たちには感覚的に伝わっているようだ。

 日本で育てあげた圧倒的な技術を海外に売り込むと云うことは、これまでにも様々な分野において成功を収めてきた。サッカー界においても施術の質を伴うトレーナーが海外挑戦し、そのポジションを確立させる可能性は大いにあるだろう。ヨーロッパに所属する選手の数を上回る日はそう遠くないかもしれない。(竹山友陽=ロンドン通信員)

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