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【コラム】海外通信員

コパ・アメリカ・センテナーリオとリオ五輪への準備態勢

[ 2016年6月18日 05:30 ]

南米選手権ペルー戦、“疑惑”のゴールに抗議するブラジル代表の選手(AP)
Photo By AP

 「なんでネイマールが出てないの?」

 現在アメリカで行われているコパ・アメリカ・センテナーリオ(南米選手権100周年記念大会)のニュースを見ていた夫がとぼけたことを言い出した。
「ええ?知らないの?じゃあ、日曜日のブラジルリーグでパルメイラスは、どこと試合をしたか知ってる?」
「フラメンゴに勝った」

 特別サッカーマニアでない一般的ブラジル人の素朴な疑問と一般的な情報だ。

 ネイマールがコパ・アメリカに出ていないのは、バルセロナがコパ・アメリカか五輪かどちらか一つの大会しか出場を許可しなかったため、セレソンのドゥンガ監督は五輪を選んだから。そんなことすら、この時期セレソンのニュースに興味を持っていない一般的ブラジル人は知らない。しかし、そんな一般的ブラジル人でも週末のブラジルリーグのクラシコ(名門対決)の結果は知っている。
「ブラジル人は、グループリーグくらいでは勝って当たり前だと思っているから、まだ盛り上がってないんだよ」

 サッカー王国と言っても、サッカーに特別興味を持っていない人もいるが、それでも自然と情報が耳に入ってくる。水曜日の夜と日曜日の夕方は、周囲の騒々しさと花火の上がり具合でどこのチームが勝っているか想像ができるのだから。

 しかし、W杯ではなくコパ・アメリカのグループリーグ程度では、花火も上がらなければ、雄叫びも聞こえない。興味の無い人からしてみたら、ネイマールが出ていないことだって知らなかったくらいの関心度なのだ。

 しかし、このコパ・アメリカ・センテナーリオの続きにリオ五輪があり、悲願の男子サッカー金メダルがかかっているというのに、一般的に凡ブラジル人にはそれほど関心ががないのだろう。
いや、そのうち盛り上がってくるはずだが。元々、W杯ではないセレソンのゲームに関しては、ガイドブックで他国のチーム事情を知ったり、対戦国研究に余念がないタイプの国民性ではない。W杯だけは、学校や仕事がいつ休みになるかという極めて重要なことが絡み、大会前からスケジュールに関してはチェックに余念がないのだが…。(W杯以外の大会では休みにならないので、国民の関心度が全く異なる)

 計画性や事前準備というものが、あまりない国民性である。14年のW杯ブラジル大会の時もそうだった。試合の日までに完全に工事が終わっていなかったスタジアムはいくつもあった。それでも何とか試合は行われ、テレビ放送もされ、無事大会を終わらせることができた。ただ、インフラ整備まではどの街も手が回らなかった。サンパウロは、現在でも国際空港までの鉄道の工事が終わっていない。

 そんな中、6月7日、リオ五輪に向けて路面電車開通!というニュースが流れた。リオのセントロ(ダウンタウン)を走る路面電車が試験運転を始め、五輪までに通常運行ができるようになるという。グッドニュースだ。やればできるのだ!

 また、地下鉄がついにリオ五輪のメイン会場であるバッハ地区までつながった!バッハ地区は、同じリオ市内とはいえ市街から30キロほど離れており、リオは岩山が多いため、高速道路は少なく、W杯のための工事がされていた頃は、渋滞に巻き込まれると2時間もかかったものだ。リオ五輪の開会式、閉会式は市街にあるサッカーの聖地と言われるマラカナンスタジアムで行われ、陸上競技の会場であるエンジェニョン(五輪スタジアム)もバッハから離れた地区だ。渋滞に巻き込まれない電車移動のための地下鉄整備は必須だった。

 とはいえ、実際に動き出すのは7月5日。五輪開会式のわずかひと月前。それも、正式開業ではなく、五輪のための暫定運行のみ。本当に五輪中、問題が起こらないか、外国の方達はかなり不安なことだろうが、ブラジル人的には間にあったのだから問題ないと、多少のハプニングは想定内くらいにしか考えていない。

 しかし、これが意外とうまくいってしまうのだから、不思議なことに…。

 コパ・アメリカ・センテナーリオでブラジルは初戦にエクアドルと引き分けた。エクアドルに勝てずにどうすんじゃい!と暴動が起きるわけでもなく、これくらいでは、まだ誰も慌てない。決勝トーナメントに進んでからサッカーに興味の無い一般ブラジル人も巻き込み、話題になってくる。さらにアルゼンチンが相手になれば、間違いなく闘争心に火がつく。なんで もぎりぎりにならないと動き出さない国民だ。リオ五輪まで、あと2カ月を切っているが、まだまだ余裕、余裕だ。(大野美夏=サンパウロ通信員)

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