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【コラム】海外通信員

英国国立フットボール博物館でのユニークな展示

[ 2015年12月8日 05:30 ]

英国国立フットボール(サッカー)博物館にはレトロなゲーム機から最新ソフトが並ぶ
Photo By 提供写真

 マンチェスター市内の中心部で人目を引くガラス張りの7階だての国立フットボール(サッカー)博物館は2012年に完成。サッカーファンだけでなく観光客も多く訪れる人気スポットになっており、オープンから1年半で約150万人が来訪している。

 世界中のフットボールファンが、テレビや写真で見て記憶している品々が1万4000点以上常設展示されており、例えばマラドーナが「神の手」を繰り出した試合で着用していたユニフォームも、歴史の一部としてケースにさりげなく飾られている。

 なぜ、そして、どのようにしてフットボールが世界中の人々のスポーツとなりえたか?という壮大なテーマを博物館のミッションに掲げているが、フットボールのルールが制定されてから約150年間の歴史がぎっしりと詰まっている展示を見せつけられると、いささか大げさでもないようだ。

 博物館には無料で入場できるということもあり、平日の朝の時間帯から世界中の老若男女で賑わっていた。コミュニティースペース、カフェ、サッカーグッズ専門店なども充実しており、地元で暮らす人々にとってもポジティブな影響を与えている施設だと感じ取ることができる。

 また博物館では、サッカーにまつわるアート作品などの期間限定の特別展示も行われており、今回のテーマはサッカーとビデオゲームの関係という世界初の試みでユニークな内容であった。展示フロアには、レトロなゲーム機から最新ソフトが並んでおり、中には日本生まれの懐かしいソフトも見る事ができた。

 キュレーターを務めるジョン・オシェア氏は、地元メディアに対して展示内容を次のように語っている。

 「これまでの40年間のビデオゲームの歴史は、実際にピッチ上でプレイする楽しみ、または生で観戦する楽しみを、どのようにビデオゲーム内で再現できるかを試みてきたものでした。そして2015年の現在となると、実際の試合の映像とビデオゲーム画面、どちらが本物か分からなくなるレベルに到達しています。そこでは、実在するクラブがもつ情報量をゲーム会社が追い越してしまう場面も生まれてきています」

 昨年、ヨーロッパ内で人気を博しているフットボール・マネジャーというソフトを制作している会社は、有名クラブチームなどに選手データなどを提供している分析会社との提携を結んだ。それによってゲーム会社のデータを使用して、選手獲得時に役立てているクラブもでてきている。どうやら、たかがビデオゲームの話だけでは済まされない領域に達しているようだ。

 上記の特別展示だけなく、常設展示においても、サッカーにまつわる歴史を説くだけではなく、若者が興味を抱きそうな話題をくみ上げ、また同時に体験型の展示スペースを必ずその場に取り込むことで、サッカーファン以外でも十分に楽しめる空間を作り上げていたのは印象的であった。

 マンチェスターやリヴァプールに試合観戦に訪れる機会があれば、試合前後に国立フットボール博物館に立ち寄ってみてはいかがだろうか。(竹山友陽=ロンドン通信員)

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