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【コラム】海外通信員

なぜ、イングランド代表はユース年代の大会で勝てないのか?

[ 2015年7月20日 05:30 ]

U-21ヨーロッパ選手権で1次リーグ敗退したU-21イングランド代表FWハリー・ケーン(右・トッテナム)とFWイングス(リバプール)
Photo By AP

 なでしこジャパンがカナダで奮闘している最中、チェコではU-21ヨーロッパ選手権が開催され、スウェーデンが決勝でポルトガルを破り優勝した。2年ごとに行われている本大会で活躍した多くの選手たちが、その後のW杯で目に見える成果を残しているため、数年後のタレントや戦術の指標を垣間みる事ができ、ヨーロッパ内での注目は高まっている。

 そんな中、イングランドはイタリアに1-3で敗れて、1次リーグでの敗退が早々に決まった。英国内では、なぜユース年代の代表チームが近年の国際大会で成績を残す事ができないかが議論された。

 プレミアリーグに巨大な資金が注入され、海外選手の獲得が若手の出場機会を奪っていることなどが代表チームの発展を妨げている原因の一つだと言われてきたが、国内リーグで有望な若手イングランド選手たちがまったく育っていないわけではない。BBCのサッカー番組で司会者を務めているギャリー・リネカー氏は、今大会で結果を出せなかった理由の一つに選手選考のやり方に大きな問題があったと指摘した。

 「本大会へ出場する選手の選考は、まさしくアマチュアのやり方そのものだ。なぜスターリング、ウィルシャー、バークリーなどがセレクトされていないのだろうか。貴重な国際大会での経験を台無しにしており、我々は何も学んでいない」

 また元リヴァプール選手のマーク・ローレンセン氏も、今後イングランドサッカー協会が取り組むべきことは、プレミアリーグの各クラブとのパワーバランスの関係改善であると、言及している。

 「国際舞台で勝つために今後やらなければならないことは、ユース年代の代表チームにおいても、トップレベルの選手たちをプレミアリーグのクラブからきちんと招集し、勝つためのメンバーを揃えることだ。今回、トッテナムのハリー・ケーンは出場することができたが、その他の多くの選手たちはチャンピオンシップ(2部)でプレーしている。商業面を優先しているプレミアリーグのクラブ側は、U-21のレベルはプレミアリーグのそれと比べると、かけ離れているので選手を送り出す必要はないと思っているだろうが、国際トーナメントで結果を残すことは、イングランド代表の発展のためには欠かせないことだ」

 イングランドサッカー協会は、2022年のW杯優勝をゴールに掲げ、2013年にイングランドDNAプログラムを発表している。ドイツ、ベルギーなど近年結果を残している各国のエリート育成モデルを参考にしつつ、U-15からA代表まで繋がるプレースタイル、戦術、フォーメーションを構築し、10年という歳月をかけて実行している最中である。

 しかしながら、今回の例のように、圧倒的な資金力をもつプレミアリーグのクラブたちが、シーズンオフである時期には選手たちを休ませ、来季のチャンピオンズリーグやリーグ戦に専念しようとする姿勢を変えることは容易ではないだろう。そのような状況のもと、自国のエリート選手たちを育成させるというDNAをイングランド全体に浸透させていくかは、協会の手腕の見せ所である。(竹山友陽=ロンドン通信員)

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