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【コラム】海外通信員

“ディフェンスは穴の空いたチーズ” オランダ代表、ユーロ予選敗退危機

[ 2015年6月15日 05:30 ]

オランダ代表フース・ヒディンク監督
Photo By AP

 オランダ代表の迷走が続いている。

 6月5日金曜日、オランダ代表はアメリカ代表との親善試合を行った。翌週、12日の欧州選手権予選、アウェーのラトビア戦に向けた準備試合という位置づけだった。アメリカが侮れない相手だとは言え、試合会場はホームであるアムステルダム・アレナ。景気良く勝ちたいところだった。だが、なんとオランダ代表は3-4で敗れてしまったのだ。

 試合は、立ち上がりからオランダが優勢だった。親善試合ゆえに緊張感はない。前半27分、フンテラールがヘディングでゴールを奪って先制。33分にアメリカのザルデスに押し込まれて1-1に追いつかれたが、後半に入ると4分に再びフンテラールが、続く8分にデパイがゴールを決めて、3-1とリードを奪った。この時点で、スタジアムには楽勝ムードが漂っていた。25分にブルークスにゴールされて1点差に詰め寄られても、緊張感の高まりはなかった。だが、試合終盤、44分にウィリアムズ、45分にウッドに立て続けにゴールを奪われて、3-4。惨めな逆転負けを喫してしまったのだ。

 翌日のオランダの新聞は大量失点を喫したディフェンスを酷評していた。デ・テレグラフ紙の見出しは「ディフェンスは穴の空いたチーズ」。コンディションがフィットしておらず欠場していたセンターバック、ロン・フラールとステファン・デ・フライの復帰が求められていた。ただ、失点が多くともGKシリッセンのプレーは評価されている。ロッテルダムの新聞では、「もっと失点していてもおかしくなかった。シリッセンに感謝しなくては」と、GKについてはポジティブに捉えていた。ただ、だからこそカウンターから安易とチャンスを作られてしまうバックラインと守備組織に問題を抱えていることが浮き上がってくる。

 デ・テレグラフ紙でヨハン・クライフはバランスが失われていると指摘。「(チャンピオンズリーグ決勝の)バルセロナ対ユベントスの試合とオランダ代表を見比べてみれば、大きな違いに気がつくだろう。オランダのエールディビジに所属する多くのチームがそうであるように、オランダ代表もコンパクトにプレーすることができない」。

 現在のオランダ代表の監督はヒディンク。PSVの監督をしていた当時は、4-2-3-1のフォーメーションで、センターバック2枚とボランチ2枚でスクエアを構成するユニットを守備の核とする堅いチームを作っていた。攻撃思考のオランダ人監督が多い中で、ヒディンク監督は珍しく守備組織構築に長けた監督だったはずだ。だが、今のオランダ代表を見る限り、その面影はない。

 アメリカ戦では、中盤3枚が逆三角形の4-3-3。バルセロナなどと同じ形だ。攻撃力はある。PSVからマンチェスター・ユナイテッドへの移籍が決まっているデパイが左ウイングとして活躍し、チームとしても3得点を奪った。だが、守備に回るとスペースを相手に与えてしまった。コンパクトさに欠け、特にバイタルエリアがスカスカに。さらには2列目から飛び出してくる選手、ファーサイドに走りこんでくる選手をまったく捕まえられずにシュートを打たれてしまう。この日、センターバックを務めたブルマとマルティンス・インディのパフォーマンスが悪かったこともある。しかし、コンパクトさに欠け、ブロックも作れないチームは、守備組織そのものが、まさに「穴の空いたチーズ」というべきものだった。この問題は、W杯ブラジル大会終了後からヒディンクが監督に就任して以来、解決していない問題だ。

 2016年欧州選手権予選を戦っているオランダは、予選グループAで現在3位。グループ1位はチェコで、2位のアイスランドから勝ち点差で5ポイント離されている。ここまで5試合を戦って2勝1分け2敗。予選のレギュレーションは、1位、2位が本戦出場。各グループ3位のチームの中から最も成績の良かった1チームが本戦へ。他の3位チームはプレーオフに回る。まだ猶予があるとはいえ、オランダ代表は予選突破が危ぶまれる状況になっている。不安定な戦いぶりを見せているヒディンクのチームは、いまだバランスを欠いた状態であることが、アメリカ戦で改めて露呈した。

 試合後、ヒディンクは、「多くの若い選手たちは高いレベルでの試合経験に欠けている。そういった選手たちは状況を正しく読むインテリジェンスを欠く。読み間違えれば、このレベルであれば(失点という)罰を受けることになる」と語っていた。

 6月12日には欧州選手権予選、アウェーのラトビア戦を迎える。後のない戦いが続いていくオランダ代表だが、いまだバランスを見失ったままだ。(堀秀年=ロッテルダム通信員)

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