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【コラム】海外通信員

英国サッカーの未来を作る4対4のミニゲーム

[ 2015年5月16日 05:30 ]

4対4のゲームで指導するコーチ(右)と選手ら
Photo By 提供写真

 その国の未来のサッカーを発展するためには、どのような育成環境を構築していくべきか、その国々によって様々な取り組みがなされている。

 英国では、国際舞台においてスペインとドイツに大きく溝を開けられたしまった背景には、コーチングの質と指導者ライセンス保持者の量ともに圧倒的な差があることが原因の一つであると議論されているが、イングランドサッカー協会が今後への一手を打っていないわけではない。

 ここ数年の間に、アカデミー改革、U-21リーグ戦設立、ホームグロウンルール導入や人口芝ピッチへの投資など様々な構造改革がすでに行われており、また数年前からグラスルーツ(草の根)の少年少女に対するサッカーの普及、育成にも大きく力を入れている。

 FA SKILLSは、2007年から始まった同協会のプログラムで、ジュニア年代(5~11歳)のフットボールスキルの向上を目的として活動している。スポーツ普及に携わる行政機関のスポーツイングランドやスポンサーから運営資金を得て放課後クラスや休日セッションを行い、料金も無料から数百円程度として、誰でも参加しやすい場所と料金を設定している。

 5月初旬、ロンドンの街クラブであるウェンブリーFCにて、FA SKILLSのコーチであるルイス・アルウッド氏の指導のもと、8歳~10歳を対象にした4対4のゲーム発展をテーマにしたトレーニングが行われた。会場となっている人口芝ピッチは、コミュニティ内の学校敷地内にサッカー協会やプレミアリーグなどから支援を受けている団体を通じて建設されたものである。

 同クラブの責任者であるマルコ・ディパオラ氏は、この日のトレーニングの印象を次のように語った。「4対4のゲームは、サッカーをプレーすることの基本がすべて詰まっている。今日の練習は、ゴールの位置や大きさ、ピッチの幅を工夫することで、攻撃と守備のおいて様々な狙いをもったセッションができていた。何よりも印象的だったのは、たくさんのプレー時間を確保して、絶妙なタイミングでコーチングをしているので、子供たちが楽しんで夢中になってプレーしていることは素晴らしかった

 コーチのルイス氏から配られた資料では4対4のミニゲームの特性が研究されており、マンチェスター・ユナイテッドの9歳の子供たちがプレーしたところ、8対8で行うゲームよりも2~3倍のパスやドリブルスキル、1対1の局面が見られ、また5倍ものゴールが生まれたそうだ。

 実践的でありながら、サッカー本来の楽しさにフォーカスを当てているプログラムは、イギリス国内ですでに5百万人近い子供たちが体験している。イングランドサッカー協会は、グラスルーツの設備やプログラムに年間100億円近く投資し、サッカーの発展を支えている。プレミアリーグのビジネス面での成功がメディアでは注目を浴びているが、数十年後の未来のサッカーの発展を支えていくのは、このプログラムでプレーすることの楽しさを知り、生涯スポーツとしてプレーを続けていく彼らであることを再認識した。(竹山友陽=ロンドン通信員)

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