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【コラム】海外通信員

スーパークラシック3連戦の舞台裏

[ 2015年5月10日 05:30 ]

熱狂的なボカのサポーター
Photo By AP

 リーグ戦、リべルタドーレス杯でボカ、リーべルのスーパークラシックが3試合も続けて行われる。アルゼンチン屈指の好カードで、ファンにとってはたまらない。しかもリーグ戦では、ボカ、リーベルは同勝ち点で首位に並び、どちらも譲れない大切な試合となっている。3連戦の1試合目のリーグ戦(第11節)は2-0でボカの勝利。後半残り5分で2点を取り、単独首位に立った。

 試合後、いつもの舞台裏の戦いが始まった。

 リーベル会長をはじめ、役員が招待席ではなく、ボカスタジアム内の地べたに座り、テレビ観戦をしている写真が公表された。これに激怒したのはボカのアンジェリッシ会長で、「こんな写真を出したのは、敗けたことから目をそらすためだ」「こんな写真がリーベルから出るなんて」「その日はリーベル会長が観戦する部屋に、リーべルの特別な関係者が招待されていた。場所がなかったため、別の席を24席設けていたのだが、彼らはそこで観戦しなかった。この写真で何を訴えたいのか分からないが、敗戦でファン、マスコミから叩かれるのを少しでも避けようとしたかったのなら、それは実現できた」と怒りをあらわにした。

 リーベル役員はこの写真を高表することで、ボカと我々は全く異なり、相手チームの関係者の対応もできないクラブとは違う。我々のように品のあるクラブとは違うと訴え、少しでも敗戦から目をそらせようとしたと思われる。アンジェリッシ会長は「2014年スド・アメリカーナカップ(優勝チームはスルガバンクカップ出場)がリーベルスタジアムで行われ、ボカは1-0で負け。試合後更衣室が停電、お湯が出なくなり、ボカ選手がシャワーを浴びずに引き上げるというハプニングがあったが、その時私は写真を撮って公表などしなかった」と皮肉を言った。舞台裏で関係者が試合以外でつばぜり合いをするのがアルゼンチンだ。

 リーベルのガジャルド監督は「見るべきものがない、面白くない試合だった。我々は現在アルゼンチンでトップレベルの1つであるボカのホームグランドに行き、アウェーで戦ったが、大した差はなかった。調子のいいボカなのでもっといい試合をすると思った。この悔しさをポジティブなエネルギーにして戦う。選手の目には熱い血が流れている、早く試合したい」とボカに刺激を与える強気の発言。

 しかしこれがアルゼンチンサッカー。試合の激しさだけではなく、特にスーパークラシック戦は、ファンはもちろん、役員、監督までもが自然に熱くなる、どんな小さな事でも本気なれる瞬間があるのだ。イタリア、スペイン系移民が多い南米アルゼンチンは、まさにラテン、南米ラテンの血が騒ぐ。これは、教えて身に着くものではなく、生まれた時から引き継がれる気質、本能であろう。この気質、本能で繰り広げられる舞台裏の戦いもあるからこそアルゼンチンは世界で最もエキサイティングなサッカーをする一国、世界レベルの選手が育つ国となっているのであろう。(大野賢司=ブエノスアイレス通信員)

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