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【コラム】海外通信員

英国内で議論される仲介人制度

[ 2015年3月14日 05:30 ]

 イングランドサッカー協会は、2015年4月1日より代理人の資格認定制度を廃止し、新たに「仲介人」の登録を選手とクラブに義務づけるレギュレーションを導入する。これは昨年10月にFIFAの理事会で決定されたものを受けたもので、日本サッカー協会も同様に規則の変更がなされる。

 大きな変更点をまとめると、現状の代理人資格試験はなくなり、仲介人として各国のサッカー協会に登録すれば選手やクラブと契約を結ぶことができるようになる。また報酬の金額については、選手の基本報酬や移籍金の3%までを上限に設けることを推奨するという方針や、未成年の選手(欧州では18歳以下)から報酬を受け取ることを禁止する項目も盛り込まれる。

 FIFAが規則改正をする理由としては、世界中で行われている移籍交渉のうちの70%が無資格の代理人によって行われている現状を改善する狙いと、仲介人業務の透明性を確保したいことが含まれている。今回の改正について、英国国内では大きな論争が巻き起こっており、代理人協会はイングランドサッカー協会に対して、独自ライセンス資格試験の導入や仲介人の報酬など、自国のルールを設けるようにロビー活動を行っている。

 英国のスポーツ法に精通している弁護士のニック・デマルコ氏は、次のようにコメントしている。「ヨーロッパ各国のサッカー協会内で行われている代理人業務に関しては、おおむね機能していました。それにも関わらず変更に至ったのは、FIFAは特に南米での移籍に関して手を焼いており、それに対する改善策を見いだす事ができなかったからだと思います。今回の代理人資格制度を撤廃するという規制緩和により、無資格の者が仲介人になれることになり、それは新たな問題が引き起こす可能性もあるのはないでしょうか」

 今回の仲介人制度に限らずに、サッカーに関するあらゆる側面が新聞やテレビにて報道されており、その社会的影響も計れない。先日もBBCが行った代理人のホルヘ・メンデス氏(クリスティアーノ・ロナウドやモウリーニョの代理人)へのインタビューは、高騰する移籍金などサッカー界への影響力を強める代理人に対して疑問を投げかけるという今までにない挑戦的なインタビューだった。仲介人制度をめぐる一連の動きを見ていくと、仲介人(代理人)、メディア、そしてサッカー協会が各々の見解を示していると同時に、彼らに強い自尊心を感じることができる。

 ヨーロッパのスポーツビジネス法務に精通し、昨年11月からイングランドサッカー協会の法務部に所属していた弁護士の栗山陽一郎氏は、協会内の現場としての姿勢を次のように語ってくれた。

 「ヨーロッパ各国協会が4月以降の自国の仲介人制度をどのように制定するかを様子見している状況のなか、イングランドサッカー協会は、国内規則をいち早く出しました。現場にいて感じることは、世界最古のサッカー協会として、またサッカーの母国の協会としての強い誇りが存在していることです」

 仲介人制度への変更がなされた後、実際にどのようなメリットや不都合が生じるのかはまだ分からないが、仲介人制度がこれまでのサッカー界の代理人業務に大きな影響を与えることになることは間違いないだろう。サッカーファンとして、仲介人制度に対するあなたの意見はどのようなものに。(竹山友陽=ロンドン通信員)

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