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【コラム】海外通信員

ランパードは裏切り者?アメリカ・サッカー界を揺るがす契約騒動

[ 2015年1月30日 05:30 ]

マンチェスター・シティーのMFフランク・ランパード
Photo By AP

 元イングランド代表、フランク・ランパードを巡る問題がアメリカ・サッカー界を揺るがせている。

 ランパードは昨シーズン限りでチェルシーを退団し、昨年7月にアメリカMLSのニューヨーク・シティーFC(NYCFC)と契約したと発表されていた。NYCFCはシティー・フットボール・グループが株式の80%、MLBニューヨーク・ヤンキースのヤンキー・グローバル・エンタープライゼスが20%を持ち、オーナーとなっている新設チームで、ヤンキー・スタジアムを本拠地に2015年春の開幕からリーグに参加することになっている。

 このため、ランパードは同じシティー・フットボール・グループ傘下のマンチェスター・シティーに昨年12月31日までレンタルされると当初発表されていた。が、年末になるとレンタル契約はシーズン末まで延長されたという報道が出、さらに今月8日はプレミアリーグが「プレミアリーグはマンチェスター・シティーから、クラブあるいはシティー・フットボール・グループとNYFCの間で、同選手に関して一切の合意は存在しないことを確認した」という声明を出したことで一挙に事態が混迷を極めることになった。

 これに対し、MLS側はたしかにランパードはNYCFCと契約を交わしていなかったが、シティー・フットボール・グループとの間でMLS移籍の合意を交わしていたと主張しているようだ。また、ランパードの代理人が今年7月にはランパードがNYFCに加入すると語ったとの報道も出ている。

 特に代理人の発言を見れば、シティー・フットボール・グループ内でマンチェスター・シティーとNYCFCの意思疎通がうまくいっておらず、内部でごたごたしただけで、結局ランパードがNYFCに入るなら問題はない、ともとれるかもしれない。が、そうはいかない事情がNYCFCとMLS側にはある。

 NYFCは昨年7月ランパード自身が同チームのTシャツを着て、入団発表を行い、さらにはそのことを売りにシーズンチケットやユニフォームを販売しているのだ。実際1万枚以上のシーズンチケットが販売済みだという。

 それが今回の騒動で、アメリカのサッカー・ファンの間でもランパードに裏切られたという感情が一挙に高まっている。「ランパードはいらないから、他の選手を穫れ」といった意見がSNSなどで拡散している状況だ。NYCFCに対する不信感も高まっている。

 さらに訴訟大国のアメリカであるだけに、もし移籍しなければこれまでランパード加入を宣伝していたことを理由にシーズンチケット購入者から集団訴訟を起こされる可能性もあるのだ。チーム起ち上げの重要な時期にあるNYCFC、さらには昨年チバスUSAが解散しているMLSとしてはそうした事態はなんとしても避けたいのである。

 ランパードの騒動は大きな渦をもたらすことになるかもしれない。(渡辺敏史=ニューヨーク通信員)

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