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【コラム】海外通信員

英国の育成年代を支える影のヒーローたち

[ 2014年9月13日 05:30 ]

フットボール育成年代(小学校~高校年代)のシーズンが9月に開幕
Photo By 提供写真

 英国のフットボール育成年代(小学校~高校年代)のシーズンが9月に開幕する。地域の街クラブを中心に構成されているリーグ戦は翌年4月末まで繰り広げられる。シーズン前の時期に選手たちは所属チームを選択し、自分にあったレベルで毎週末のゲームを戦うことになる。たとえば、小学校5年生(U-11)の年代では カテゴリーが7部まで分かれており、試合結果もウェブサイトに即座に反映されるなどプロ顔負けの環境になっている。

 フットボール文化を発展させていくために、未来を担う選手たちのプレー環境を整えることは非常に重要なことだ。プロクラブはスカウトを試合会場へ派遣し、優秀な選手を発掘していくわけだが、街クラブや地域リーグ戦の存在なしにはプレーを見る機会を得ることができない。 リーグの運営者や各クラブのコーチ陣の多大なる貢献が、英国フットボール文化の豊かさを支えている。注目すべき点は、彼らが平日に自らの仕事をこなしながら、週末や仕事が終わった後の時間をボランティア活動としてコーチングや業務などをおこなっていることだろう。

 ロンドン西部地域に位置するミドルセックス・フットボール協会管轄のハローユースリーグでは、U-7からU-18のカテゴリーに約600チームが参加し、登録選手は10,000人を超える。チェアマンのアンディ・ロー氏を筆頭に約10人のリーグ運営組織が形成されている。筆者もコーチとして、このユースリーグに参加しているがリーグ運営はプロフェッショナルそのものである。

 アンディ氏は、昼間は仕事をしながら、毎週40~50時間をリーグ運営のためにボランティアとして膨大な時間を費やしている。約600枚もの試合結果を報告するカードが毎週末自宅に届けられ、それを整理することを想像するだけでも気がめいるだろう。またその試合結果報告カードには、運営に問題がなかったかどうかをチェックする箇所があり、もしも問題が報告された場合には、次の週にアンディ氏が会場に出向き、フェアプレーの心得を保護者や選手に直接伝える役割も担っている。彼は毎週末行われているリーグ戦を8試合観戦しているそうだ。

 2013年にイングランドフットボール協会は、フェアプレーやリスペクトプログラムの普及発展に多大なる貢献をはたしているアンディ氏の功績を称えて、ボビームーア個人賞を贈った。表彰式はFA杯決勝戦の舞台で行われ、アンディ氏は次のようなコメントを残している。「この賞をいただけたのは、私個人の仕事に対してだけでなく、FAが推奨するプログラムをハローユースリーグ全体で取り組めていることだと思います。まだまだやるべきことはたくさん残っていますが、フットボールを楽しむことができる安全かつフレンドリーな環境を提供できるよう心がけていきたいと思います

 150年の歴史をもつフットボール文化の根底を支えているのは、街クラブのリーグ戦を地道に発展させていく影のヒーローたちの存在である。リーグ戦とは別に、FA杯と同様の一発勝負のチャレンジカップもスケジュールに組み込まれており、こちらは今回で第74 回目を迎える。(竹山友陽=ロンドン通信員)

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