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【コラム】海外通信員

リーガの指揮官 トレンドは“レジェンド”起用

[ 2014年7月18日 05:30 ]

今季からバルセロナの監督に就任したのも“レジェンド”のルイス・エンリケ
Photo By AP

 昨季のリーガエスパニョーラ王者となったディエゴ・シメオネ率いるアトレティコ・マドリードが、一つの道を切り拓いた。“チョロ(シメオネの愛称)”は現役時代にアトレティコのアイドルとして絶大な支持を集めていたが、複数のクラブが過去のレジェンドを監督として招へいし始めているのだ。

 現在のリーガ1部で、選手として足跡を残したクラブで監督を務めるのはシメオネのほか8人。パコ・へメス(ラージョ・バジェカーノ)、エルネスト・バルベルデ(アスレティック・ビルバオ)、フランシスコ・ハビエル・ロドリゲス(アルメリア)、ガイスカ・ガリターノ(エイバル)、コスミン・コントラ(ヘタフェ)、エドゥアルド・ベリッソ(セルタ)、セルヒオ・ゴンサレス(エスパニョール)、ルイス・エンリケ(バルセロナ)で、いずれも“チョロ”のアトレティコ指揮官就任後に招へいされている。また以上の監督のようにトップチームに在籍したわけではないが、レアル・ソシエダ率いるジャゴバ・アラサテは同クラブのカンテラで過ごした経験を持つ。

 クラブが過去に在籍した選手を監督として登用するケースはこれまでにもあった。が、財政難のために名将との契約が困難な現状もあって、アトレティコの成功にならうクラブが増えている。実際、結果が出なければ「出ていけ」とのコールがすぐに巻き起こるリーガにあって、選手としてファンに愛され、またクラブのアイデンティティーを理解する監督は重要な存在だ。昨季であればマラガ監督を務めたベルント・シュスターが、就任当初からマラギスタ(マラガファン)に疑惑の目を向けられ、シーズンを通して本拠地ラ・ロサレダでのブーイングに苦しんだ。

 しかし、古巣復帰を果たす監督に向けられるのは「オレ! オレ! オレ! “チョロ”・シメオネ!」のように選手時代のコールとなる。エスパニョールに4シーズン在籍し、スペイン国王杯を1度制したS・ゴンサレスを例に挙げれば、今季の年間シート販売におけるプロモーションの顔となるなど、クラブの新たな象徴となることを期待されている。

 S・ゴンサレスは今季からエスパニョール指揮官となったが、それ以前に就任した監督は着実に成果を残している。現ビルバオ・アスレティック(ビルバオBチーム)監督ホセ・アンヘル・ジガンダとともに魅惑の2トップを形成したバルベルデは、昨季にチャンピオンズリーグ出場圏の4位でシーズンを終え、P・へメスは2010~11シーズンにリーガ1部復帰を決めただけでなく、翌シーズンにはクラブ記録となる8位まで導いた。また、リーガ最年少監督であるフランシスコは昨季にアルメリアを1部に残留させ、ガリターノはクラブ史上初となるリーガ1部昇格を達成している。もちろん、最後に物を言うのは監督としての手腕だが、クラブが過去の名選手を招へいする策は、現在のところ機能していると言えるだろう。

 プレシーズンを開始したアトレティコの練習場に足を運べば、夏季キャンプに参加している子供たちまでもが「オレ! オレ! オレ! “チョロ”・シメオネ!」と叫ぶなど、シメオネは新たな世代の英雄にもなっている。選手時代の栄光をさらに輝かせる監督を、今季新たに目にすることになるのだろうか。これまで築いてきた恋愛関係が崩壊することほど、悲しい物語もないだろうが…。(江間慎一郎=マドリード通信員)

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