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【コラム】海外通信員

イタリアは表彰好き? 長友、ジェントルマン・アワードの最終候補

[ 2014年5月11日 05:30 ]

セリエA・ジェントルマンアワード最終候補に選ばれたインテル・ミラノのDF長友佑都(左)
Photo By AP

 「長友がジェントルマン・アワードの最終候補に残った」。4月17日、このようなニュースが飛び交った。ジェントルマン・アワード(伊名Premio Gentleman)とはイタリアのサッカー選手に送られる年間フェアプレー賞だ。

 年ごとの優秀選手等を決める表彰としては、全選手の投票で選出されるイタリアプロサッカー選手会(AIC)主催に「オスカル・デル・カルチョ」があり、そこでもフェアプレー賞というものは設定されている。だが『ジェントルマン・アワード』とは、かいつまんでいえばファン主催。1996年ミラノのイベント主催者グループにより設立され、「ピッチ上で公正さと情熱に気品、そして対戦相手へのリスペクトを示した選手」(同賞HPより)に贈られる。当初はミラノの2チーム限定で、上記の基準に合う選手がインテルとミランから一人ずつ記者投票などによって選出されていたが、1999年から規模が拡大され、リーグ全体を通した”最優秀選手”も選抜されるようになった。さらに2012年からリーグを通したジェントルマン・アワードは、同賞HPガゼッタ・デッロ・スポルトのWEBページ、またスマホアプリやFacebook上からのウェブ投票も加味されるようにもなった。

 この手の表彰というものは、イタリアでは各地に多い。当地でももともとはインテルとミランの選手たちにゆかりのある賞で、サン・シーロで新人かそれに準ずる活躍をする人に与えられる賞や(10~11シーズンには長友も受賞している)、それぞれのクラブのシーズンベストゴール賞なども選出される。ただスポンサーなどが付く事によって規模が年々拡大化し、この手の類いの賞としてはイタリアの中では一番ステータスのあるものと考えられるようになった。ちなみに今年の受賞候補者は以下の10人。ペリン(ジェノア)、長友(インテル)、ピルロ(ユベントス)、ディ・ナターレ(ウディネーゼ)、トッティ(ローマ)ビアビアニー(パルマ)、デニス(アタランタ)、イグアイン(ナポリ)、ジュセッペ・ロッシ(フィオレンティーナ)、カカー(ミラン)。

 そして5月8日、表彰が行われた。会場は市内の大型ホテル。そのレセプションルームを借りきり、クラブやその他の関係者をあつめてパーティー形式で賑々しく行われるのだ。ホテルの入り口前にはレッドカーペットと専用のパネルが用意され、プレゼンテーターとして2013年のミスユニバースイタリア代表まで呼ばれる気合の入れ様だった。

 もっともこの日、長友はおろか主将のサネッティと「サンシーロの新鋭選手賞」に選出されたジョナタン以外の主力は姿を見せず、受賞者もビデオ出演に留めていた。ELに向けて重要なラツィオ戦を控えており、クラブからは主催者側に対し「マッツァーリ監督は主力選手を練習に集中させたがっている」という説明があったという。一方、4日のミラノダービーを制したミランからはカカー、ターラブト、ラミ、そしてアッビアーティの4人の選手が訪れていた。やはり基本は、ミラノのサッカー関係者向けのお祭りのようである。

 さて今年のセリエA・ジェントルマンアワードに選出されたのは、残念ながら長友ではなくカカー。そのカカーはちょうどブラジル代表の選考から漏れたところだったが「残念ではあったけど別に驚いてはいないし、逆に呼ばれたらびっくりした。僕はやれるだけのことはやったけど、選ぶのはスコラーリ監督だから構想に合わなければ仕方がない」とさばさばと語った。現在去就も噂される立場だが「まだ1年契約は残しているし、何よりミランはとても居心地がいい。僕は残りたい」と語った。

 なおこの日は、今季限りでの引退を表明したばかりのサネッティが特別賞を受賞。「僕にとって、これが選手として受け取る最後の賞になるね」と感慨深げな表情でトロフィーを受け取り、「当時はなんでもなかった僕を信じて獲得してくれたモラッティ会長をはじめ、イタリアの皆さん全てに感謝したい」と目を潤ませながらスピーチしていた。(神尾光臣=イタリア通信員)

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