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【コラム】海外通信員

欧州舞台の重要性を認識 ELに力を入れるユベントス

[ 2014年4月17日 05:30 ]

リヨン(フランス)を下して欧州リーグ準決勝進出を決めたユベントスのコンテ監督
Photo By AP

 4月10日、UEFAヨーロッパリーグの準々決勝第2レグでユベントスはリヨンを下し、準決勝に駒を進めた。イタリア勢の4強進出は、09年に現大会規定が施行されてからは初めて。前身のUEFAカップから数えると07~08シーズンのフィオレンティーナ以来6シーズンぶりの出来事となった。

 欧州クラブの頂点を決めるUEFAチャンピオン・リーグ(旧称UEFAチャンピオンズ・クラブズ・カップ)に次ぐ位置づけの欧州クラブ間国際大会として、UEFAカップが発足したのは1970年のこと。スペインやイングランド、ドイツ勢を抑えて国別で優勝回数トップだったのは、実はイタリア勢だった。ユベントス、インテルがともに優勝3度、マラドーナが所属していた頃のナポリが1度、そして90年代後半から00年代前半にかけ、7つのビッグクラブがセリエAで覇権を争っていた『セブンシスターズ』の時代には、パルマも優勝を2度経験している。

 しかしイタリア勢は、この大会を真面目に闘おうとしなくなった。97~98シーズンからチャンピオンズリーグへの参加チーム枠が拡大されると、そちらの方に参加意欲を燃やし、セカンドカテゴリー的なイメージの強いUEFAカップを軽視する傾向が強まった。09年、同大会がヨーロッパリーグにテコ入れされても変わらないどころか、軽視には拍車がかかった。チャンピオンズリーグのグループリーグで敗退したクラブの一部が途中から加わることで、大会のプレステージは保たれた。その一方で、参加クラブの枠を全ヨーロッパに渡って拡大させた結果、日程も過密なら移動距離も過酷な大会方式になってしまった。昨季、アゼルバイジャンのバクーへの遠征を強いられたインテルは、肉体的な負担を減らすためにアリタリア航空の長距離線機材をチャーターしたほどだ。

 そんなことができるクラブはまだいい方で、多くは疲労を抜く暇もないまますぐに週末のリーグ戦だ。そのくせ大会参加で得られるロイヤリティーも低ければ、テレビ放送権料もチャンピオンズリーグと格段の差がある。「国際大会の魅力は強豪国のクラブによって保たれているようなものなのに、われわれの作った金が外に逃げて行くような状況はたまったものではない」とあるクラブの幹部は漏らしていた。結局彼らはこの大会を捨て、リザーブを出して負けた。しかしそこには手痛いしっぺ返しが待っていた。大会の成績が出ないためUEFAカントリーポイントは目減りし、ドイツに抜かれてチャンピオンズリーグの出場クラブ枠を4から3へと減らされてしまったのは周知の通りだ。それだけではない。2年連続で16強に進むチームさえ出せなかった10~11、11~12シーズンの不振が響き、UEFAリーグランキングではとうとうポルトガルの猛追さえ受ける事になった。

 ただ、こういう状況になってようやくイタリア勢も現実をわきまえたというか、チャンピオンズリーグで振るわないならばせめてヨーロッパリーグで、という機運がやっと生まれてきた。昨季はベスト16に2チーム、そして今季は3チームが残り、ポイントの低下になんとか歯止めがかかる(UEFAリーグランキングは、主催の大会に出場したクラブの勝利や上位進出により付与される)。その結果4位のイタリアの66.772に対し、5位ポルトガルは61.466。そしてなんの因果か、ユベントスの準決勝の対戦相手はポルトガルのベンフィカになった。負ければ悲惨だが、勝てば5位転落を免れて来年以降に繋げることができる。

 「われわれがイタリアの”旗艦”になれていることは喜ばしい事だし、国際大会でユーベを久々に準決勝へと押し上げられたのも嬉しい。国内にはアンチユーベが多いことも知っているし、(ライバル心の特に強い)インテルファンが応援してくれるとも思わないが、そんなことをエネルギーに頑張りたい」コンテ監督は意欲を見せる。今シーズンの決勝は5月14日、彼らのホームのユベントス・スタジムアムで行われる。(神尾光臣=イタリア通信員)

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