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【コラム】海外通信員

男前な攻撃サッカー 首位フィテッセ指揮官は元市原

[ 2013年11月28日 05:30 ]

 今シーズンのエールディビジは大混戦だ。首位から勝ち点3差に4チーム、勝ち点6差に7チームがひしめいている。例えば開幕時にボールも人もよく動く攻撃サッカーで注目を集めた名門PSVは、最近になって調子を落とし、現在は8位。本命不在とも言うべきシーズンになっている。

 そんな状況にあって、現在単独首位に立っているのが、フィテッセだ。昨季も31得点を決めたコートジボアール人FWボニーの活躍もあって首位争いを演じていた。だが、ボニーはプレミアリーグのスワンジーへ移籍。若くしてブレイクし、オランダ代表にも招集されたMFファン・ヒンケルはチェルシーへ引き抜かれた。フレッド・ルッテン監督も辞任。主力が抜けて監督まで変わったフィテッセは、今季は難しいシーズンになるだろうと思われた。だが、蓋を明けてみれば、昨季ですら成し得なかった単独首位に立ち、周囲を驚かせている。

 今季から監督に就任したのが、ペーター・ボス監督だ。現役時代はオランダ代表にも選出されたディフェンダーで、1999年にはジェフ市原でもプレーした。監督としては、当時アマチュアだったAGOVVや1部下位のデ・フラーフスハップといったクラブを率いた後、04年から06年までヘラクレス・アルメロの監督を務め、当時在籍していた平山相太を指導した。その後、フェイエノールトでテクニカル・マネージャーを務めた後、再びヘラクレスの監督に。2011~12シーズンには、国内カップ決勝にまで導いた。

 ボス監督のサッカーの特徴は、“男前な攻撃サッカー”だ。オランダサッカーらしいとも言える。例えば相手CKの時、ハーフラインギリギリに3人の選手を残す。相手CKはカウンターのチャンス、つまり得点チャンスだと考えているのだ。

 試合終盤の残り15分で1、2点リードしていたとする。守備的な選手を入れる場面だが、ボス監督は、フレッシュな攻撃的な選手を投入する。相手が同点に追いつこうと前がかりになれば、裏のスペースが空く。カウンターのチャンス、つまり得点チャンスだと考えるのだ。ケガやよほど調子が悪くない限り、守備的な交代はしない。

 この“男前な”采配のおがけで、ボスが率いるチームは試合終盤、いつも撃ち合いになる。同点ゴールを決められるか、とどめの一撃が決まるか、ハラハラドキドキのロシアンルーレットのような展開になるのだ。手堅さには欠けるが、ボス監督の、腹をくくった攻撃サッカーの下で、若い選手たちが伸び伸びと持ち味を発揮し、見ていて楽しい。

 シーズンも中盤にさしかかり、フィテッセにはボスのサッカーが十二分に浸透してきた。その中で、ピアソンという20歳のブラジル人アタッカーがブレイクしつつある。そして、4-3-3のセンターフォワードとしてスタメンに定着しているのが、ハーフナーだ。

 11月24日にフィテッセはアウェーでゴー・アヘッド・イーグルスと対戦。ハーフナーはピアソンとのワンツーで抜けだしたところを倒され、PKを獲得。同時に相手を退場に追い込んだ。このPKを決めたピアソンの2ゴールもあって、フィテッセが3-0で勝利。ハーフナーはスタメンフル出場した。

 「圧倒してたでしょう。PKもあって、相手も退場した。自分も点が欲しかったですけどね。でも、1位の座を防衛できたので、良かった」と、試合後のハーフナー。フィテッセは、試合の立ち上がり、相手がフレッシュな間のプレスが厳しい時にはプレッシャーを飛ばしてハーフナーにボールを入れ、相手にペースを握らせない。徐々にボールポゼッションを高めつつ、試合終盤にかけてテクニックとスピードを生かしたサッカーで相手を圧倒する。そんなプランで試合を進めることが多い。チームはベースとなるべき基盤が出来ており、試合プラン上においてもハーフナーは重要な駒なのだ。

 この日の相手は昇格組だった。だが、「昨季は下位チームから勝ち点を取りこぼしていた」とハーフナー。実際昨季、優勝争いをする中で、フィテッセはアヤックスやPSVに勝利する一方で、勝てば首位に立てるという中位以下チーム相手に引き分けたり負けたりしていた。だが、「今は結構上手く試合運びができていて、いいところで点を取って、勝っている」

 ここにきて一時調子を落としていたアヤックスが復調傾向にあり、順位をあげて勝ち点2差の2位にまで上がってきている。このまま首位の座を守るのは容易なことではない。それでも、FWボニーがいた昨季以上に、フィテッセはいい流れできている。上記のブラジル人アタッカーのピアソン同様、チェルシーからのレンタル組がチームの選手層に質をもたらしている。また、そのチェルシーに引き抜かれたファン・ヒンケルの代わりにスタメンを務めるようになったMFプロパーがブレイク中で、先日のオランダ代表にも初招集された。フィテッセの選手層は、アヤックスやPSVと比べても、決して見劣りはしない。ひょっとして、という可能性は昨季以上のものがある。

 首位チームのスタメンFWを務めるハーフナー。ペーター・ボス監督の“男前な攻撃サッカー”。エンターテイメントとしても楽しい今年のフィテッセは、要注目だ。(堀秀年=ロッテルダム通信員)

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