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【コラム】海外通信員

“イタリア人的”メンタリティーからの脱却 攻撃的なサッカーへの変化続くイタリア代表

[ 2013年6月20日 06:00 ]

A代表での攻撃的サッカーの起点となっているイタリア代表MFピルロ(右)
Photo By AP

 先週末に開幕したFIFAコンフェデレーションズカップで、ご存知の通り日本とグループAで同組のイタリアは、16日にメキシコと激突。ピルロの鮮やかな直接FKとバロテッリのパワフルなゴールで、2-1と勝利した。しかもポゼッション、シュート数ともに優っていたのもイタリアだった。試合後の記者会見で「引き過ぎではないですか」と記者にツッコミを受けていたのは、メキシコ代表のデラトレ監督のほう。もはや、ゴール前を固めて守り勝つ『カテナチオ(「かんぬき」の意)』のイメージは、もうどこにもない。

 EURO2012から続き、イタリア代表はプランデッリ監督のもとですっかりカラーを変えた。高い位置からプレスを掛けて、組織的に相手の攻撃を限定し、そしてピルロを軸とした鮮やかなパスワークを展開する。しかしこの一大カラー転換は、監督の意思だけで実現をしたものではない。グループリーグ敗退に終わった2010年W杯南アフリカ大会後、イタリアサッカー協会(FIGC)は組織の大改革に乗り出した。

 まず年代別の代表からA代表までを一括した組織のもとに置き、かつてACミランでゾーンプレスを駆使し、欧州最強のチームを作り上げたアリーゴ・サッキ元監督をスーパーバイザーとして招聘した。「次世代へと切り替える。海外から“イタリア人的”と呼ばれるようなメンタリティーから脱却しなければならない」デメトリオ・アルベルティーニ副会長は語っていた。

 そう、スタイルを変えたのはA代表だけではないのだ。U―17、U―20と、やはり攻撃的なサッカーのもとで選手を育てようというコンセプトに転換。そして、それが徐々に実を結びつつある。コンフェデ杯よりやや早く開幕したU―21欧州選手権プレーオフで、イタリア代表は15日にオランダを破り、決勝に進出した。攻撃サッカーを展開して、だ。

 A代表がコンフェデを戦うことになった一方で、FIGCはこの大会も重視。パリSGの若きレジスタであるベラッティや、ナポリのファンタジスタ、最近はA代表にも常連となりかけていた若手をこのチームに残したことからも、期待度はうかがい知れる。実際彼らはピッチで違いを作り出したが、特筆すべきはチーム全体の攻撃性だ。

 システムは4-4-2。最終ラインは高く押し上げられ、高い位置からプレスを掛けてボールを奪うと、サイドハーフが積極的に中に切れ込み、またサイドバックも連動して盛んにオーバーラップするなど、スタイルはサッキ時代のミランだ。グループステージの開幕戦では、イングランドを内容で圧倒したのちに、インシーニエの芸術的なFKで勝利。続くイスラエル戦では、全開で攻め込み4得点で決勝ラウンド進出決定。先行されたノルウェー戦でも積極性を捨てず、1位通過をものにした。潔いまでに攻撃的な姿勢が光る。

 率いるのは、「サッキの愛弟子」といわれるデビス・マンジャ監督。まだ39歳だ。ゾーンプレスを駆使するサッキのサッカーに影響を受けた彼は、2011年にバレーゼのプリマベーラ(ユース年代)を全国選手権の準優勝まで導く。それが評価されてパレルモへヘッドハントされると、トップチームの監督解任により後釜として急遽抜擢された経歴もある。その後彼もパレルモのザンパリーニ会長に解任されるが、サッキがU―21代表の監督にとスカウト。そしてこの結果である。

 下部組織の試合を観ても、最近は攻撃的なサッカーを積極的に展開するチームが実に増えてきた。若手指導者の研修会でも「モダンサッカーを目指すように」とサッキは語っているという。その集約たるべきイタリア代表の変化は、今後もしばらくは続きそうである。(神尾光臣=イタリア通信員)

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