×

【コラム】海外通信員

世界を制したビアンチ監督は本気か?

[ 2013年5月18日 06:00 ]

厳しいスタートを切ったボカ・ジュニアーズのビアンチ監督
Photo By AP

 ボカが史上最悪のスタートを切った。リーグ戦初戦で1勝しが、13節を終えて1勝7分け5敗と12試合連続で勝ち星なし。20チーム中18位に低迷し、1956年の10試合連続勝ちなしのワースト記録を塗り替えてしまった。ビアンチは皮肉にもボカのベスト、ワースト両記録を保持する監督になってしまった。

 今季アルゼンチンリーグの最大の話題は、べレス、ボカでクラブ世界一になったビアンチがボカの監督に復帰したこと。そして、2部リーグから復帰したばかりのリーベルに1996年にリベルタドーレス杯を制覇したラモン・ディアスが監督として戻ってきたことだ。スター選手不在のリーグ戦を盛り上げたのはこの2人だった。ファンはそれぞれの監督の手腕を期待しだが、蓋を開けてみると、過去のレベルには程遠いものだった。

 もちろん選手は当時とは入れ替わっている。監督には責任がないのか。ビアンチ、ラモン・ディアスは自ら、世界レベルになるような努力をしているのであろうか。

確かに過去の栄光は若い選手に大きな刺激を与えるだろう。しかし、当時の戦術をレベルの違う選手に要求してもできないし、進歩がないように感じる。

 ビアンチはリケルメの復帰により、黄金時代のように彼にすべてのボールを集める戦術を使っている。善し悪しは別として、リケルメがいる以上この戦法になってしまうのはわかるが、以前のようなキレがない選手を起点にして勝てるのか。本当に選手はそれを望んでいるのか。実際、リーグ戦は結果が出なかったため、現在は若手を起用し、リベルタドーレス杯に照準を絞っている。

連敗が続くとすぐに解雇されるが、少し経つとその監督が他のチームの監督をしている。プロはそういうものかもしれないが、監督もサッカーを本気で学んでいるのか疑問だ。その程度で監督が務まってしまうアルゼンチンの現在のレベルが心配だ。その中で手で頑張っている監督もいる。彼らのため、アルゼンチンサッカーのためにもサッカー界一眼となってレベルアップに努めてもらいたい。
 
12節に行われたリーベル1部復帰後のスーパークラシックは、世界が注目したが、ボカもリーベルも力を出し切れずに1-1の引き分け。周囲は盛り上がっているが、試合そのものはお粗末な内容だった。

 周知のとおり、南米の選手は、国内リーグで活躍し、認められてヨーロッパに活躍の場を移す――というパターンだ。そう言う気持ちの選手が多いだたけに、本気でチーム作りをすれば、国内リーグのレベルも必然的に向上する。そのためにも監督も常に勉強していなければならない。それにより監督自身も世界で活躍できるチャンスがある。

良い指導者に学ぶということはサッカーに限らずどの世界でも望まれることであろう。
もう一度ビアンチとして、彼のすべてをアルゼンチンサッカーのために注いでもらいたい。すべての面で「本気」を出すビアンチがみたい。本気を出すのは今しかない。リベルタドーレス杯を注目したい。(大野賢司=ブエノスアイレス通信員)

続きを表示

バックナンバー

もっと見る