×

【コラム】海外通信員

FFPの先行く規定を発表、リーガエスパニョーラに冬の時代到来

[ 2013年2月10日 06:00 ]

5億1700万ユーロ(約658億円)の年間予算を計上しているレアル・マドリード
Photo By AP

 世界最高峰のリーグと称されてきたリーガエスパニョーラに、ついに冬の時代が到来した。スペイン教育文化スポーツ省・スポーツ上級審議会(CSD)のミゲル・カルデナル会長とスペインプロリーグ機構(LFP)のホセ・ルイス・アスティアサラン会長が、リーガ所属クラブの財政を取り締まる規定を発表したのだ。

 LFP管轄の1&2部に所属するクラブが抱える負債総額が約35億ユーロ(約4461億円)。また倒産法を適用したのが42クラブ中21クラブと、他の欧州リーグよりも財政破綻に近づいているリーガ。UEFAもクラブの財政適正化のために“ファイナンシャル・フェアプレー(FFP)”を来季から本格導入するが、CSDとLFPの規定はFFPの先を行くものとして存在することになる。

 CSDとLFPは、9カ月間で60回もの会議を行い、この規定をつくり上げた。1部&2部のクラブは今後、4月30日までに次シーズンの予算案をLFPに伝えることを義務づけられる。

 クラブがクリアしなければならない課題は、かなり厳しい。スポーツ面以外のコストは昨シーズンから10%減らすだけでなく、出資事業における費用は正味資産の30%(2部クラブは60%)以下に定められ、最低3%の利益が求められる。もちろん、期限切れの債務も減少も必須だ。またスポーツ面での支出については、倒産法適用中のクラブを中心として制限が課される。カルデナル会長、アスティアサラン会長ともにその制限の詳細を公表しなかったものの、支出が収入を超えることを原則的に禁ずるとのことだ。それを破った場合には、選手補強が禁止されることになる。

 カルデナル会長は「スペインサッカーの以前、以後が刻まれるはず」と、この規定の重要性を強調。アスティアサラン会長は「スペインでは経営の透明化が叫ばれるが、サッカーにも浸透させる時がやってきた。この規定が、短・中・長期にわたる運営を助けることになる」と、クラブの財政状況が改善されることに自信を見せた。

 CSDとLFPは今回の規定以外にも、リーガの未来に関わる重要な決定を下してきた。2012年には約7億ユーロ(約890億円)にまで膨れ合った財務省への債務を2020年までに返済することで各クラブと合意。返済が滞った場合、クラブの放映権収入の35%を充てることとなった。また2011年にはFFP対応策として資金が資本金の50%を超えること、トップチームの給与支出に収入の70%以上を費やすことを禁止し、これを破ったクラブにはリーガの参加資格をはく奪するというペナルティーを定めている。

 今回の規定が決定打となり、クラブは足並み揃えて我慢の時期を迎えることになるだろう。もちろんレアル・マドリードとバルセロナ抜きで、だ。グローバリゼーションの流れに乗る2強の予算は、ここ数年でさらに増加している。今季、レアルは2シーズン前と比べ6700万ユーロ(約85億円)アップの5億1700万ユーロ(約658億円)、バルセロナは4200万ユーロアップ(約53億円)の4億7000万ユーロ(約599億円)の予算を計上。3位アトレティコ・マドリードで1億2300万ユーロ(約156億円)と約4倍、最下位のラージョ・バジェカーノであれば1600万ユーロ(約20億円)と約30倍の差をつけている状況だ。

 この格差の要因の一つには、契約を各クラブ個別で結んでいるテレビ放映権収入がある。ただ、この件については、今後のスポーツ法改正によって大きな動きがありそうだ。CSDは、LFPが放映権を一括管理することでの収入増、また各クラブの収入比率の減少に前向きだ。カルデナル会長はこの件について、「欧州主要リーグの中で、リーガはクラブが個別に契約を結んでいる唯一のリーグだ。現在の分配方法を見直し、競争力を根付かせることは重要と考えている」と発言。ただし、現在が「クラブが債務を支払い、経営を立て直すときである」ことも強調している。

 金を注ぎ込み、また注ぎ込み、持っていなくとも注ぎ込んでいた以前のクラブの姿は、これから過去に変わることになる。 この冬の時代を越えた先に、クラブの健全経営の下、競争力が芽生えたリーガを見ることになるのだろうか。(江間慎一郎=マドリード通信員)

続きを表示

バックナンバー

もっと見る