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【コラム】海外通信員

2部リーグが盛り上がってしまったアルゼンチン

[ 2012年4月26日 06:00 ]

 リバープレートの2部落ちで、NACIONAL・B(2部リーグ)の注目度が上がり、過去に例のない観客動員増加となっているアルゼンチン。中小クラブにとっては経済的効果もあり、来季もリバープレート残留を願っていることだろう。

 確かに2部と言っても、ロサリオ・セントラル、ウラカン、ヒムナシア・エスグリマ・デ・ラプラタ、インスティトゥート(コルドバ)、キルメス、フェロ等過去に1部でも結果を出しているチームが多い。いつ昇格してもおかしくないチームばかりで、1・5部というかんじだ。AFA(アルゼンチンサッカー協会)は、今回のリバープレート2部を機に、1、2部をまとめたリーグ戦を検討しているが、経済効果を考えると理解できないことはない。

 南米では多くのクラブが、若い選手をヨーロッパなど世界各国のチームへ移籍させて移籍金を取り、経営している。そのため主力選手はすぐにチームを離れてしまい、上位を守り続けるというのは難しい。それに加えてクラブを私物化し、財政難を引き起こす経営者もおり、リーベルのようなビッグクラブでも2部落ちしてしまう。ビッククラブだからこそこのようなことになったともいえるのだ。

 クラブ経営の面から考えると1、2部をまとめたリーグにするというは悪くないが、世界で最も熱いアルゼンチンの熱狂的なファンの感情が簡単には許さない。その前にクラブ経営陣やAFAの責任を問うことになる。本1、2部をまとめたリーグになると、1部を目指して戦っているチームや選手のモチベーションが下がり、ますますレベルが下がることになる。現在、2部が1部を上回る人気になった逆転現象は、リーベルという国民の約半分をファンにするビッグクラブが落ちてきたからで、本来は怒らないことだ。

 アルゼンチンには今後解決しなければならない大きな課題がある。クラブの財政難が問題で起きることだが、真の監督の育成だ。アルゼンチンはリーグが始まり、連敗が少し続くとすぐに監督をクビにする。監督もそれを分かっているため、簡単にクビを受け入れるが、次に来る監督もちょっと前にどこかのチームをクビになった人。クラブのビジョンなど関係なく、たまたま失業していて名前が知れた人がいると、監督になってしまうことが多い。そして、またしばらくするとクビになる。お陰で還暦を過ぎた監督や過去の栄光だけで戦う監督がけっこういる。アルゼンチンの良さはもちろん残さなければならないが、毎年進化し、変わっていくサッカーをしっかり勉強している監督がアルゼンチン国内には何人いるのか疑問だ。指揮官がしっかりしなければ、チームとは言えなくなってしまう。

 たとえ経営的に余裕がないクラブでも、将来の事を考えて我慢することも必要だと思う。そうすれば監督も必死で勉強するはずだ。宝くじのように「外れたらクビ」では、チームが強くなるはずがない。リーベルだけでなく、他の強豪チームもそろって2部落ちしたのはそういう悪循環のためだ。

 リーベルは、「来季、絶対に1部昇格という明確な目標があるので本気で戦っている。4月22日のインスティトゥート(コルドバ)との首位攻防戦ではリーバープレートスタジアムは超満員となり、リーベルは1-0で勝利。インスティトゥートに勝ち点1点差まで肉薄したが、その気になれば叶うことを証明した。

 1986年から約26年間、W杯の優勝から遠ざかっているアルゼンチンは、2部リーグが盛り上がるおかしなことになっている。今こそアルゼンチンの熱い感情(パッション)を表に出してほしい。(大野賢司=ブエノスアイレス通信員)

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