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【コラム】海外通信員

2011ブラジル全国選手権 中堅クラブを躍進させた元鹿島MFジョルジーニョ

[ 2011年12月10日 06:00 ]

フィゲイレンセジョルジーニョ監督(写真はブラジル代表コーチ時代のもの)
Photo By AP

 2011ブラジル全国リーグ、コリンチャンスの優勝で幕を閉じた

 5月に始まったブラジルの全国リーグが12月4日コリンチャンス(サンパウロ市)の優勝で幕を閉じた。

 6年ぶり5回目の優勝を成し遂げたコリンチャンスは、今年2月に怪物ロナウドが現役引退するというビッグニュースもあったが、ベテランと若手、そして強い基盤(ブラジル2位のサポーターを持つ巨大クラブ)に支えられて38試合を崩れることなく最後まで戦いきった。
 
コリンチャンスと2位のヴァスコ・ダ・ガマ(リオ・デ・ジャネイロ市)が優勝を争い迎えた最終節、コリンチャンスは引き分けでも優勝、ヴァスコは、勝利プラスコリンチャンスの敗戦が必要だった。ヴァスコは名門対決でボタフォゴと対決し勝利したが、コリンチャンスが名門対決パルメイラス戦でドローだったため、優勝はコリンチャンスの手に渡った。

 翌年のリベルタドーレス杯出場権を得た上位4チームは、3位のフルミネンセと4位のフラメンゴと、上位陣をリオのクラブが優勢を誇った。

フラメンゴは、昨年、正Gkのブルーノが女性絡みの殺人事件で逮捕されるという大スキャンダルが起き、ピッチのパフォーマンスもくずれ、ふんだりけったりのシーズンだったが、今期は巻き返しのためロナウジーニョを獲得していた。

 その効果もあり、上半期のリオ州選手権で無敗の優勝を決め、全国リーグに入った。9月には、チームは1位争いをし、好調のロナウジーニョは、10カ月ぶりにセレソン(代表)に呼ばれるというご褒美までもらったほどだ。だた、その後、ロナウジーニョのサラリーを肩代わりしていたトラフィック社(スポーツマーケティング社)がクラブとのもめごとでサラリーを払わなくなるなど、終盤に入り乱れ始めたが、なんとか持ちこたえ、見事4位に入賞。目標であったリベルタドーレス杯出場権を得た。

上位の順位
1位 コリンチャンス
2位 ヴァスコ
3位 フルミネンセ
4位 フラメンゴ
5位 インテルナシオナル
6位 サンパウロFC
7位 フィゲイレンセ
8位 コリチーバ
9位 ボタフォゴ
10位 サントスFC

 最終節の翌日、CBF(ブラジルサッカー協会)と全国リーグ放送権を持つブラジル最大のテレビ局、グローボが共催する年間表彰式がサンパウロで行われ、ベスト11は次のような顔ぶれとなった。

GK ジェフェルソン(ボタフォゴ)
右SB ファギネール(ヴァスコ)
右DF デデー(ヴァスコ)
左DF ヘーヴェル(アトレチコ・ミネイロ)
左SB ブルーノ・コルテス(ボタフォゴ)
MF ハウフィ(コリンチャンス)
MF パウリーニョ(コリンチャンス)
MF ジエゴ・ソウザ(ヴァスコ)
MF ロナウジーニョ(フラメンゴ)
FW ネイマール(サントスFC)
FW フレッジ(フラメンゴ)

 監督賞には、ヴァスコのリカルド・ゴメス監督とクリストーヴァン・ブアルキの2人が選ばれた。リカルド・ゴメス監督はシーズン半ばに病に倒れて、引き継いだのがブアルキだったため。

 今シーズン特筆すべきことがある。最後までリベルタドーレス杯出場枠を争い、ビッグクラブの中に割り込んだ中堅クラブ、フィゲイレンセの躍進だ。監督は、ブラジル代表の右SBで活躍し、鹿島アントラーズでもプレーしたジョルジーニョだ。前ブラジル代表監督ドゥンガの右腕だったが、今シーズン、2年ぶりに全国リーグ一部に返り咲いたフィゲイレンセ(サンタ・カタリーナ州)の監督に就任した。決して財政的に余裕のあるクラブではないため、知名度のある選手を補強することなくリーグを戦ったのだが、結果は、20チーム中の7位。しかも、最終節まで上位4位のリベルタドーレス杯出場枠の可能性を残してメディアをにぎわした。南アW杯で不甲斐ない結果を残したドゥンガのスタッフとして、決して良い評価を得られなかったジョルジーニョだったが、1年後に見事監督としての手腕を評価されることになり、監督賞のファイナリスト3人に選ばれた。最優秀監督賞は惜しくも逃したが、ジョルジーニョの采配で才能を発揮したFWウェリントン・ネンが新人賞に輝いた。

 また、今やサントスFCの至宝から、ブラジルの、世界の至宝へと階段を駆け上がっているネイマールの快進撃も目立った。フェイント、ドリブル、ゴールとどれをとっても見るものを魅了したネイマールは国内の賞は総なめ、さらにはFIFA世界最優秀選手賞23人の候補に選ばれ、ベストゴール・プスカス賞のファイナリスト3人に残り、さらに2011シーズンベスト11にもノミネートされている。

 ちょうど12月5日にクラブW杯のため日本に向かったサントスFCは、順位は10位に終わったが、ネイマールの格別さに文句なしでMVPが贈られた。

 得点王には、ベガルタ仙台時代J2の得点王にもなっているサントスFCのボルジェス。38試合で23点決めた。

 もう一人、注目すべきは、MFのロナウジーニョ。終盤戦に11試合ノーゴールというスランプに陥ったが、最終節で同点ゴールを決め、貴重なポイントをたたき出しフラメンゴは4位に残り、ロナウジーニョ自身は、ベスト左MFに選ばれた。「サラリーの調整さえつけば、来期もフラメンゴでプレーを続け、将来的にフラメンゴで引退をしたい」と希望を持っている。果たして、来年もロナウジーニョが赤&黒のユニフォームを着ているだろうか。

 そして、復活の兆しが見えてきたのは、アドリアーノ。今シーズン、コリンチャンスの大物補強として期待されたにもかかわらず、いきなり怪我で戦線離脱した。結局、シーズン通してリハビリで終わったような感があるが、最終節一つ前で547日ぶりのゴールを決めた。来季こそは、本領発揮となるか。(大野美夏=サンパウロ通信員)

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