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【コラム】海外通信員

スペインリーグ開幕!今季もバルサvsレアルの2強対決に注目!

[ 2011年8月31日 06:00 ]

開幕戦でリーグ初得点を決めて、早くも大きな戦力になりそうな新加入のMFセスク
Photo By AP

 スペインリーグが予定より1週間遅れで8月27日の週末から開幕した。本来は、8月20日の週末から開幕するはずだったが、昨年だけでも約200人選手の給料未払いが約5,000万ユーロにもなっている状況に、8月11日にAFE(スペイン選手協会)が解決策を求めて開幕第1節、第2節でストライキを行うと宣言。LPF(スペインプロリーグ協会)と話し合いを行ったが合意に達せず、1984年以来、実に27年ぶり5度目のストライキが行われた。その後、7度の話し合いが行われ、ようやく8月25日に合意に達し、第2節のストライキを回避して開幕にこぎつけた。

 今季のスペインリーグの特徴は、試合開始時間の変更だろう。土曜日の試合開始時間は18時、20時、22時の3つに設定、日曜日の試合開始時間は12時、16時、18時、20時、22時の5つに設定、月曜日の試合開始時間は21時に設定されたことだ。特に日曜日の12時試合開始は、アジア諸国へのスペインリーグのテレビ放送権の販売アピールを意識しての決定で、これによりアジア諸国の日曜日の夜のゴールデンタイムにスペインリーグのテレビ中継が見られるようになる。スペインでは試合開始時間が遅く、日曜日の試合でも早くても17時開始だっただけに正午12時や16時の試合開始時間は早すぎるとの不満が出るのは間違いないだろう。

 それはさておき、そのスペインリーグは開幕戦でバルサ、レアル・マドリー(以下、レアル)が圧倒的な強さで初戦を大勝で飾り、今季もリーグ優勝争いはバルサとレアルの“エル・クラシコ”の2強対決となりそうだ。もちろん、バルサ、レアルだけでなく、上位常連のバレンシア、ビジャレアル、セビージャ等の巻き返しや、大幅な補強を行ったマラガやアトレティコ・デ・マドリー等の期待したいところではあるが、現実的にはバルサvsレアルの一騎打ちとなるに違いない。

 既にバルサvsレアルの宿命のライバル対決は開幕前から火花を散らしている。昨季末にスペイン史上初の4試合連続“エル・クラシコ”対決で、フィールド内外で繰り広げられた激戦、舌戦の余韻が残る中、今季初の公式戦となったスペインスーパー杯で昨季のスペインリーグチャンピオンのバルサとスペイン国王杯チャンピオンのレアルが再び対戦した。レアルのホームでの第1戦は2-2の引き分け、第2戦ではホームのバルサが3-2でレアルに競り勝ち、2試合合計5-4でバルサが3年連続10度目の優勝に輝いたが、両チームの力の差はわずかであると感じる好試合だった。

 しかし、その第2戦の終了間際に両チームのベンチ前で、レアルのマルセロがバルサのセスク・ファブレガスにファールして一発退場処分になったことから選手たちばかりか、コーチ陣も加わってもみ合いになり、マルセロ、エジル、ビジャの3選手が退場処分になった。もっと驚いたのはその騒動の際にモウリーニョがバルサのティト・ビラノバ助監督に背後から近寄り、何と指を彼の右目に突っ込んだことだ。レアルはとても良い試合を行ったのに勝てなかったフラストレーションで理性を失ったのか、このモウリーニョ監督の奇行に驚いて振り向いたティト・ビラノバ助監督は彼の後頭部を手で叩いて報復する事件が起き、試合は後味が悪いものとなった。

 この事件を重くみたスペインサッカー協会は、モウリーニョ監督とティト・ビラノバ第2監督の行動を審議することになり、規約によるとモウリーニョ監督に4~12試合の出場停止処分と602~3006ユーロの罰金が、ティト・ビラノバ第2監督に1~4試合の出場停止処分と最高602ユーロの罰金が科せられる可能性が出てきた。処分が下されるのはまだ先になるが、早くもバルサ、レアルファンの間で熱い討論が繰り広げられている。

 過去に指揮したどのクラブでも就任2年目には絶対の自信を持っているモウリーニョ監督が率いるレアルは、プレシーズンマッチで24年ぶりに7戦全勝で好調な仕上がりで、前線から激しくプレッシャーをかけてボールを奪い、コンパクトでスピードのある攻撃を仕掛け、明らかに昨季より良いチームになってきた。特にクリスティアーノ・ロナウドとエジルのコンビネーションは息が合ってきて、ベンゼマの復調も著しい。今季のレアルは、MFシャヒン(ドルトムント)、MFアルティントップ(バイエルン・ミュンヘン)のトルコ代表コンビはケガでデビューが出遅れているものの、DFコエントラン(ベンフィカ)、FWカジェホン(エスパニョール)、DFバラン(ランス)の5人の補強を行ってさらにチームを強化している。

 一方、バルサは、チーム全員が揃って練習した回数がわずかなこともあり、プレシーズンマッチでは6戦2勝2分け2敗とややイレギュラーな状態でフィジカル的に調整不足が目立った。それはバルサに合流したばかりでプレシーズンマッチに全く参加していなかったメッシが先のスペインスーパー杯第1戦の試合中に呼吸困難からフィールドで吐いていたことでもわかる。それでもメッシが凄いのは、スペインスーパー杯2試合に3ゴール2アシストと全得点に絡む活躍をしたことだ。今季のバルサの補強は、チリ代表のFWアレクシス・サンチェス(ウディネーゼ)とアーセナルから8年ぶりに古巣のバルサの戻ったMFセスク・ファブレガスと、はえ抜きのバルサBからトップチームに上がったMFティアゴとDFフォンタスの4人だが、メッシが「皆頼もしい助っ人だ」と太鼓判を押している。特にバルサの下部チームで同期だったメッシとセスクのフィーリングは抜群で、早くもバルサの新しい攻撃パターンになりつつある。

 バルサは8月26日にモナコで行われた欧州スーパー杯でも昨季のヨーロッパリーグ優勝のポルトを相手にメッシとセスク・ファブレガスのゴールで2-0と勝ち、早くも2冠を獲得して良いスタートを切った。しかもこの優勝は欧州カップ戦で通算15タイトル獲得目となり、これまでのACミランの14を抜き、欧州で最多タイトル獲得クラブとなったばかりか、バルサはクラブ通算74タイトル獲得となり、レアルの通算73タイトルを抜き、スペインで最多タイトル獲得クラブとなった。これでレアルは否が応でも今季のタイトル獲得を目指して意欲がわくことだろう。

 スペインリーグはまだ始まったばかりだが、4季連続リーグ優勝を狙うバルサと打倒バルサを掲げてリーグ優勝奪回に燃えるレアルの対決は今から目が離せない。(小田郁子=バルセロナ通信員)

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