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【コラム】海外通信員

2014年W杯ブラジル大会

[ 2011年6月25日 06:00 ]

 2007年にブラジルが2014W杯開催国に決定した時、2014年などずっと先のことだと思っていた。しかし、月日はあっという間に過ぎ、タイムリミットまでわずか3年となってしまった。3年しかない!にもかかわらず、この国は相変わらずのスローペースだ。

 決勝戦は、ブラジルサッカーの聖地、リオデジャネイロ市の州立マラカナン・スタジアムで行われることは当然のこととして疑問の余地はなかった。が、オープニング、開幕戦の場所がいまだに正式決定していない。

 サンパウロ市は、ブラジルきっての経済都市ゆえに、普通に考えればリオと二分して、このビッグイベントの一端を担うべきとされてきたが、いまだにスタジアムのめどがたたない。

 サンパウロ市きっての巨大スタジアムといえば、8万人収容(かつては16万人収容)のモルンビー・スタジアムだが、FIFAが設定するレベルの近代化には莫大な費用がかかる。しかもモルンビーはサンパウロFC私営のため、公費投入に壁があり、一クラブがその費用を集めるめどもたたず、結局モルンビー案はなくなった。

 2010年、サンパウロ市が巨費を投じて新スタジアムを建設するしかサンパウロ市で開幕戦が行われる可能性はないといわれていた矢先、サンパウロFCのライバルクラブ、コリンチャンスが、ビッグスタジアム建設の構想を掲げCBF(ブラジルサッカー連盟)とFIFAからのお墨付きをもらった。

 コリンチャンスのスタジアムで、開幕戦が行われるだろうとほぼ決まったようなことを言っていたものの、2011年になっても、なかなか工事が進まない。6月、やっと基盤工事が動き出したものの、実のところ資金の調達が確約されていない。このままでは、絵に描いた餅に終わる可能性が高くなってきたというのだ。

 はっきりしているのは、2013年のコンフェデレーションズカップには間に合わないということ。12都市が試合会場に選ばれたが、サンパウロ市以外にも、間に合わないであろうスタジアムの方が多いのだ。

 コンフェデレーションズカップまでに間に合いそうなのが、唯一セアラ州フォルタレーザ市の州立カステラン・スタジアム。マラカナンは2038年にできあがるだろうという予測がされている。パラナ州、リオグランデドノルテ州は、工事が始まってもいないのでいつできるかなど予測も立たないとか。

 先日、リオグランデドスール州ポルトアレグレ市の会場候補スタジアム、ベイラ・リオで試合を見る機会があったが、建設から40年と老朽化も激しいし、FIFAの要求するレベルに達するには、リフォームよりも壊した方がいいのではと思うほどだった。今のままで行くと完成は2017年と予測されている。

 いずれにしろ、どの工事も当初の予算を大きく上回ることになりそうだと言われて
いる。

 間に合わないのは、それだけでない。サンパウロ州内陸部のカンピーナス市からサンパウロ市、リオまでの高速鉄道の案があった。新幹線が来るかも!と期待をしていたが、すでに絶望的。正確に言えば、政府は高速鉄道案を完全に捨てたわけではないが、2014年はもちろん、2016年のリオ五輪にも間に合わないことがはっきりしている。

 さらに、一番問題視されているのが、空港だ。現時点で、ブラジルきっての空の玄関口と言われているサンパウロの空港は常にカオス状態。1995年以来の急速な経済発展に伴い国内外への飛行機の利用が激増したにもかかわらず、大規模な拡張はされていない。チェックインカウンターも、滑走路も、出入管の窓口も、駐車場もどれも足りない。すべてにおいて許容量をオーバーしているからだ。また、市街地までの鉄道網はない。市内へ向かうタクシーも到着時間によっては30分以上待たなければ乗れない有様だ。

 地方都市においては、大都市のような混雑はない代わりに、ホテルが足りなく、公共交通も準備が進んでいない。教育や福祉など手が回らない現状がある一方で、スタジアムに巨費を投じるのはいかがなものかという意見もある。いくらサッカー王国でも、地方都市のスタジアムで4万人規模を作って、常に満員になるかといえば、無理だろう。

 世界的マーケティング企業のGfKの調査によると、68%のブラジル国民が2014W杯は間に合わないと思っているという結果が出た。普通に考えれば、絶望的だろう。でも、なんとかしてしまうのだろう。いったいこの先どうやって帳尻合わせるのか。(大野美夏=サンパウロ通信員)

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