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【コラム】海外通信員

スペインから日本にエール!頑張れ日本!

[ 2011年4月1日 06:00 ]

<バレンシア-セビリア>選手の名前をカタカナに表記したバレンシアの選手たち
Photo By AP

 この場を借りて、3月11日に起こった東日本大震災で亡くなられた方々のご冥福をお祈りするとともに、被災者の方々に心よりお見舞い申し上げます。そして一日も早い復興をスペインから願っています。

 スペインでは、今回の東日本大震災のニュースをスペイン国営テレビ放送の24時間ニュースチャンネルでNHKワールドの放送を流すなどして、いかに大日本で規模の地震が起こり、その後の大津波で多くの死者、行方不明者、そして被災者が出た上に、原発事故も重なった模様を毎日のように報道している。被災地の信じられないような映像を見ては呆然とし、悲しくなるばかりだ。

 実は3月11日は、スペインにとっても恐ろしい事件が起きた日だった。ちょうど7年前の2004年3月11日にスペインの首都のマドリーのアトーチャ駅付近でイスラム過激派のアルカイダのよる近距離列車爆破テロ事件が起き、191人が死亡、約2,000人の負傷者が出た日だった。人為的に引き起こされテロ事件と天災の違いこそあれ、奇しくも同じ日に起こった日本の大惨事にスペイン中が悲しみに包まれた。

 スペインサッカー界では大地震が起こった直後の週末の3月12日と13日、スペインリーグ第28節の各試合前に、犠牲者のために1分間の黙とうを行った。特に13日のセビージャ対バルサ戦では両チームの選手たちが日本の大震災の被害者を応援するために日本語とスペイン語で『頑張れ、日本!僕らは君と共にいる!=Animo Japon!Estamos contigo!(=アニモ ハポン!エスタモス コンティーゴ!)』と書かれた横断幕を持ってフィールドの中央に立った。続く3月16日の欧州CL決勝トーナメント1回戦第2戦レアル・マドリード対 オリンピック・リヨン戦でも『私たちは日本の皆さまと共にいます』と日本語で書かれた横断幕を両チームの選手たちが掲げ、1分間の黙とうが行われた。

 3月19、20日の週末のスペインリーグ第29節でも各試合前に1分間の黙とうが行われた。私は3月19日のバルサ対ヘタフェ戦を観戦にカンプノウ・スタジアムに行ったが、この大震災の酷さを知ったバルサファンの友人達やプレス仲間が「日本の家族は? 家は大丈夫か?」と、皆が心配してくれた。さらには見知らぬ人でさえも私が日本人であるとわかると「日本は大変だが頑張って!」と口々に声をかけてくれたのが何とも有難く、嬉しかった。

 このバルサ対ヘタフェ戦には在バルセロナ日本国総領事館の椿秀洋総領事がクラブ側から招待され、試合前にスタジアムの電光掲示板に『FCバルセロナは日本と共に』と日本語とカタラン語、そしてスペイン語でメッセージが映し出される中で1分間の黙とうが行われた。椿総領事が、「バルサが勝つための選手たちの能力を信じているように、我々も不幸を乗り越えるための日本の能力を信じています。」とコメントしたのを聞いて胸が熱くなった。なお、在バルセロナ日本国総領事館では東日本大震災の被災者のための義援金を受け付けている。

 バルサは日本にスペイン以外で最も多い1,470人のソシオ(会員)を持ち、高い人気を誇るチームであり、福岡にはバルサのサッカースクールがあるだけに日本のバルサファンのことをとても心配していた。バルサのグアルディオラ監督が「日本で起きた大地震にとても心を痛めている。バルサが来夏にアジア遠征を行う場合は日本に行って皆を勇気づけたい。」とエールを送っただけでなく、バルサはクラブ組織の一つであるFCバルセロナ基金が中心となり、バルサのHPを通じて義援金を募集し、ユニホームのスポンサー協定を結んでいるユニセフを通じて東日本大震災の被災者のために力になるキャンペーンを行っている。バルセロナの町のもう一つのクラブで、昨年、中村俊輔選手が所属していたエスパニョールも日本のエスパニョールファンクラブとコンタクトをとって日本にエールを送っている。

 3月20日のバレンシア対セビージャ戦ではバレンシアが粋な計らいを行った。何とバレンシアの選手たちの名前がカタカナで表記された特別ユニホームを着てプレーしたのだ。バレンシアは2004年夏に日本遠征を行い、日本の神戸と大阪にサッカースクールを持つなど日本になじみが深い。マヌエル・ジョレンテ会長は「日本で起こった大震災の被害者のために、少しでも支援する気持ちを表したいと思ってカタカナ表記のユニホームで試合に臨んだ。しかしセビージャに負けて日本のバレンシアファンに勝利を捧げることができなかったのが残念」とコメントしたのが印象的だった。

 そのスペインリーグは残り9試合を残し、首位のバルサと2位のレアル・マドリーが5ポイント差でリーグ優勝を争っている他、来季のCL出場権、ヨーロッパリーグ出場権争いもし烈で、さらに1部残留争いはかなりの混戦状態で目が離せない。日本のサッカーファンの友人が「こんな時こそ、応援するチーム、好きな選手が活躍してくれると元気が出るね」と呟いたが、サッカーが人々に与える影響力は計り知れないほど大きいものだ。

 日本を応援しているのはサッカー界だけではない。バルサのバスケットチーム出身で現在、全米プロバスケットリーグの強豪ロサンゼルス・レイカーズに所属しているパウ・ガソルは、スペイン代表で2006年夏に日本で行われたバスケットの世界選手権で優勝した思い出の地、日本の大震災の被災者のために3月25~27日に行われた試合で決めたポイントを、1ポイント分/1,000ドルとして寄付しようと呼びかけた。彼は3月25日の対ロサンゼルス・クリッパーズ戦で26ポイントを決めて公約通り26,000ドルを寄付した。同日、パウ・ガソルの実弟でメンフィス・グルスリーズに所属するマルク・ガソルも対シカゴ・ブルズ戦で決めた14ポイントの14,000ドルを寄付している。また、パウ・ガソルの呼びかけに賛同した全米プロバスケットリーグの20選手以上が試合で決めたポイント分を日本に寄付している。

 多くのスペインの人々が日本に起こった大惨事に心を痛め、心配してくれている。スペイン人の友人が「どんな困難な時にも必ずポシティブなことがある。」と言って励ましてくれたが、どんな形であれ、日本の被災者の方々にエールを送ってくれている。このことに感謝しつつ、この励ましのエールが日本の被災者の方々に届き、少しでも元気の素になることを願っている。頑張れ日本!(小田郁子=バルセロナ通信員)

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