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【コラム】海外通信員

2018サンパウロ州リーグ決勝戦の結果は無効になるか?

[ 2018年4月25日 20:45 ]

 今年はブラジルにとって4年に一度の忙しい年である。国を挙げての大イベントW杯と大統領選挙があるからだ。

 W杯は欧州サッカーのオフシーズンに当たる6月14日から7月15日に開催されるわけだが、ブラジルサッカーのカレンダーは欧州とは異なるため、W杯を挟んで例年とは異なる日程が組まれることになった。

 ブラジルで新シーズンは各州リーグが1月末に始まる。広大なブラジルでは全国リーグよりも各州選手権の伝統が古く、人気もある。今年のサンパウロリーグは例年よりも2週間早い1月17日に始まり4月8日にファイナルを迎えた。12月にリーグが終了して、束の間のオフを過ごしたら、プレーシーズンの練習もそこそこに新シーズンが始まってしまった。そして、終わりはW杯に合わせて例年よりひと月早く終わり、全国リーグがすでに始まっている。

 サンパウロ州リーグのファイナルはサンパウロダービーであるパルメイラス対コリンチャンスとなり、ファーストレグがコリンチャンスホームで行われパルメイラスが1−0の勝利。セカンドレグは満員のパルメイラスホームで行われ、コリンチャンスが1−0で勝利となりPK戦にもつれこんだ。二人連続失敗したパルメイラスに対して、コリンチャンスは一人失敗のみ4−3で優勝を決めたのだった。

 しかし、この優勝はすっきりしないものだった。というのも、後半パルメイラスはコリンチャンスDFのエリア内ファウルによりPKをもらった。これに対してコリンチャンス選手たちが主審に対して延々と抗議を続け、ついに主審はPKを取り消してしまったのだ。しつこく食い下がらないコリンチャンスの選手たちを見ていたパルメイラスサポたちは、まさか判定が覆ったりしないと思っていたが、10分ほどもめた後、主審があっさりと降参しPKを取り消したことに怒り、呆れかえった。それでも、試合は続行され、結局パルメイラスは負けた。一昔前なら、荒くれサポがフィールドに乱入してもおかしくない状況でありながらも、パルメイラスベンチもサポも実におとなしかった。

 スタジアムにはパルメイラスファンしかいなかったため、しーんと静まり返った中、コリンチャンスの優勝セレモニーは粛々と行われているのを横目にパルメイラスサポはスタジアムを後にした。これで、優勝賞金、約1億7000万円をコリンチャンスは手に入れたはずだったのだが・・・。

 しかし、さすがにこの話はこれで終わらなかった。

 パルメイラスのマウリッシオ・ガリオッテ会長は怒り心頭でぶちまけた。

 「こんなものはゴミみたいな恥さらしの大会だ。主審がPKを取り消したことは、ブラジルサッカーの恥だ。なんのための大会なんだ。4人めの審判が5分くらい考えてから、やっぱりPKは取り消そうと言ってきた。パルメイラスはこんな小さな大会なんかよりも、これからもっと大きな目標であるリベルタドーレス杯に向けて、我々は練習し、戦っていく。パルメイラスはビッグクラブで、素晴らしいチームを持ち、熱狂的なサポがいて、最新のスタジアムを持ち、安定した経営状態なすばらしいクラブなんだ。この大会のことも、サンパウロ州協会のことも忘れてやる。」

 試合後で会長は感情的になって州協会に暴言を吐いたとはいえ、PK取り消しはあまりにも不可思議だった。

 そのためパルメイラスは、スポーツ裁判所に試合の無効を求めることにした。何が起きてPKが取り消されることになったのかを調査会社に依頼し、現在調査が始まり、サンパウロ州サッカー協会の審判委員会の一人が、スマホをいじっている写真が証拠として揃えられている。審判委員会が試合中に外部との接触を図ることは禁じられている。裁判は審判に対して判定取り消しの影響を及ぼしたことが証明されれば、試合が無効になる可能性はある。

 大会最後に批判にさらされた州協会だが、今年度、サンパウロ州リーグは若手選手に活躍の場を与えるため、州リーグの登録選手枠を正規の26人プラス、16歳以上21歳以下の育成部に1年以上所属している選手を育成枠として登録できるレギュレーションにするなど、改革に取り組んでいる。元ブラジル代表のマウロ・シウヴァが先頭に立って各クラブとの懇談を重ね、それぞれが抱える問題や選手育成にかかわる課題に立ち向かうなどポジティブな活動をしているだけに、パルメイラスにとっても協会にとっても良い解決法が見つかることを願うばかりだ。(大野美夏=サンパウロ通信員)

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