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インシーニエの起用法 ベントゥーラの失敗

欧州CLシャフタル・ドネツク戦、交代時にサッリ監督(左)と抱擁するFWインシーニエ
Photo By AP

 11月13日、サン・シーロ。ロシアW杯欧州予選プレーオフ第2戦に臨んだイタリアは、高さと集中力でゴール前を固めるスウェーデンの守備を崩せずに苦しんでいた。第1戦は0−1で落としており、このままでは敗退が決まってしまう。しかし10番をつける攻撃のエース格、ロレンツォ・インシーニエはベンチに座ったままだった。プレーオフの第1戦では後半30分からようやくの出場。勝利が厳命された第2戦でも先発から外され、ノーゴールで時間は推移するもアップにすら声が掛からない。「オレを入れてどうするんだよ?勝たなきゃダメなんだろ、引き分けじゃまずいんだよ!」アップを命じられた守備的MFのダニエレ・デ・ロッシが、アップさせるべきはこいつだろうとばかりにインシーニエを指差しながら、スタッフに怒っていたシーンが地元のTVに読唇術で抜かれていた。

 結局試合はスコアレスドローに終わり、イタリアの予選敗退が決まった。ジャンピエロ・ベントゥーラ監督は当然のごとく猛烈な批判を地元メディアやファン、サッカー関係者から受けるのだが、大きな批判の理由となったのはやはりインシーニエを使わなかったことだった。「インシーニエは現在で最も調子がいい選手なんだから使うべきだった」とは、元イタリア代表監督のアリゴ・サッキ氏。またインシーニエが所属するナポリのアウレリオ・デ・ラウレンティス会長も「呼んでおいて使わないのは、インシーニエのイメージも汚すし我われにとっても経済的な損失となる」と非難した。

 確かに今シーズンの活躍を見ていれば、インシーニエをベンチにクギ付けにしておくのは賢明な選択とは言えなかった。左サイドをメインのプレイゾーンとし、正確なスルーパスやクロスを通したかと思えば、華麗なミドルシュートもねじこむ。スペースへ飛び出すスピードも速く、ドリブルをさせれば細かいステップで敵を翻弄する。UEFAチャンピオンズリーグでマンチェスター・シティと対戦した時も、相手の守備陣を振り回していたのだ。そんなインシーニエは、プレーオフ第2戦から5日後のセリエAミラン戦でも先制ゴールを挙げるなど大活躍。なおさらベントゥーラ批判に拍車がかかりそうな展開になるなか、それを諌める発言が出てきた。ナポリのマウリツィオ・サッリ監督だった。

 「私にとって、インシーニエは欠かすことのできない選手だ。それはナポリでのこの3年間で思い知らされたこと」としながら、「監督はそれぞれの経験に基づいて仕事をする。ベントゥーラはセンターフォワードを2枚置いた2トップでプレイしてきたし、それは周知のことだったはず。彼を袋叩きにしている今の雰囲気は好きではない」と、ベントゥーラが戦術上の理由でインシーニエを使わなかったことについては理解を示していた。

 インシーニエが最も輝くのは4−3−3システムの左FWとして起用された時だ。左前方のスペースに動いてボールを呼びこみ、周囲の味方をパスでうまく使うとともに、右足をゴールに向けてシュートを狙う。一方4−4−2を主体で戦ってきたベントゥーラ監督下のイタリア代表では左サイドのMF。守備もよくやるので破綻はきたしていなかったが、得意な左前方のエリアから離れたところでのプレーを余儀なくされるので、良さはあまり出なかった。「代表に来たらインシーニエはずっと冴えないのはなぜだ」と言う批判が地元メディアからは盛んに出ていたが、なんのことはない。適切なポジションでプレイできていなかったからである。ただ戦術上、全体の守備のバランスを取る必要などもある。不都合なシステムやポジションでやらされるのも仕方のないことだ。

 とはいえ、やはりベントゥーラ監督に落ち度があった点は否めない。別のシステムをやるならやるで、それに適したメンバーを見つけることも出来なかったからだ。9月のスペイン戦に大敗してからは4−4−2すら放棄し、毎試合でシステムをいじる。その一方で、同じストライカータイプのFWを2トップに置くという戦術は頑なに変えなかった。結局プレーオフ前になり、このポジションに故障者が続出。スウェーデン戦にはコンディション不良の選手を送らざるを得なくなる一方、インシーニエをはじめ他のシステムであれば使える選手はベンチに縛り付けられたままだった。

 第1戦は0−1で推移、ベントゥーラは仕方なく後半にインシーニエを途中出場させる。ただその時はなんと、適正から全く離れたインサイドMFでのプレイをいきなり命じた。これでは良さが出せるはずもなくイタリアはノーゴール、そして第2戦はインシーニエの出場そのものがなし。地元紙の報道では、第2戦に向かうにあたりベテラン勢から彼を左FWとして起用する3−4−3で行ってみればどうかという提案がなされたが、ベントゥーラ監督は拒否していたのだという。

 ナポリのサッリ監督は、就任当初インシーニエを4−3−1−2のトップ下で使っていたものの、うまく行かなかったためシステムを変えたところ機能した。一方ベントゥーラ監督は調子の良い選手の見極めができず、それを適切に起用するための柔軟性にも欠けたところが、プレーオフで出てしまった。「監督はこれが正しいと思って、メンバーを選んで出した。それは受け入れているし、自分がプレイできなかったことよりイタリアが予選落ちしたことを残念に思っている」と殊勝に語るインシーニエ。なおのこと、そんな彼をW杯で見られないのは残念なことだ。(神尾光臣=イタリア通信員)

[ 2017年12月3日 06:00 ]

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