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今季大ブレイク ジダンも惚れ込んでいた
恐るべき怪童エムバペ、早くもプリンスから王に?!

欧州CL準決勝ユベントス戦でアウベス(左)のタックルをかわすモナコのFWエムバペ
Photo By スポニチ

 ジャンルイジ・ブッフォンがフランステレビに特別出演したのは、チャンピオンズリーグ(CL)準決勝ファーストレグ(モナコvsユベントス)の直前だった。いまヨーロッパ中をくらくらさせている怪童キリヤン・エムバペを語るためである。

 なにしろエムバペが生まれたのは1998年12月。ブッフォンはとっくにプロフットボーラーになっていた。親子ほどの年の差だ。そんなブッフォンは、まるで息子のことでも語るかのように、目を細めて言った。

 「未来のメッシ、未来のロナウド、未来のネイマールと対戦できるなんて、こんなに嬉しいことはないよ」――

 一方のエムバペは、「あのCLテーマソングを聞くとね」、と目をキラキラ輝かせ、「しかもブッフォンのような偉大なキーパーと対戦できるなんて」、とまた目がキラキラ。「もう幸せだよお!」。この怪童は実に爽やかである。

 そのピッチ対決は、さすがに“親”の勝利となった(0−2)。エムバペは何度も“点火した火薬”のようにブッフォンに襲い掛かったが、ブッフォンが矜持をみせて“消し止めた”のだ。そして少年の丸刈り頭を思わずブッフォンが撫でた。「坊主、なかなかよかったぞ」と言っているようだった。

 私が初めてエムバペ少年の噂を聞いたのは2013年。本の執筆でINFクレールフォンテーヌ(前育成と呼ばれる段階のフランスフットボール連盟直属エリート学院)を取材していたとき、ジネディーヌ・ジダンがエムバペをレアル・マドリードに招待した、と知ったのだった。ジダンも当時、最高峰監督ライセンスを取得するためクレールフォンテーヌ(連盟技術部門総本山)に通っており、そこでまだ14歳のエムバペを発見、惚れ込んだのだった。

 だがエムバペはモナコ育成センターを選んだ。賢明な選択だと思った。あまりに小さいうちに外国に行くのはリスクが高いからだ。そこで私は、エムバペがいつプロの世界に登場してくるかと、わくわくしながら待っていた。

 そして今シーズン、怪童はついに大ブレイクを果たしたのである。

 恐るべき新記録の連続だった。

 そもそもリーグアン(L1)デビューが16歳。同初ゴールは17歳2カ月。ティエリー・アンリのモナコ史上最年少ゴール記録をあっさり打破してしまった。そして2017年は、“出場すればほとんど毎試合ゴール”状態。L1初ハットトリックも18歳2カ月で叩き込んだ。

 しかもその10日後にはCLマンチェスター・シティ戦でゴール。もう止まらず、CLノックアウトラウンド4試合で5ゴールを決めた史上最年少プレーヤーになった。ブッフォンに抑えられるまで毎試合ゴールしていたのだから凄い。只者ではないことがヨーロッパ中に知れ渡った。もちろん18歳3カ月の若さで、フランス代表初キャップも飾ってしまった。現時点で今シーズン全試合を合計すると、なんと23ゴールである。とくに2017年に入ってからのゴール効率は87分に1ゴールで、メッシもカバーニも凌ぐのだ。

 フランスのレキップ紙が一面に「行かないで」の大見出しを掲げたのは、4月25日。せめてあと1年フランスに残ってくれという哀願だった。だが数日後にはスペインのマルカ紙が一面にでかでかとエムバペを登場させた。怪童のレアル入団がほぼ確実だというのだ。

 そしていま巷は、この噂でもちきりである。「レアルはたった18歳の少年に、ポグバの移籍額を上回る1億2500万ユーロを提示したらしい!」「史上最高額だ!」「レアルとエムバペの間もすでに合意に達しているらしい」「だがモナコは必死に慰留している」「BBCをすぐ押しのけるのは難しい、行くべきじゃない」「いやベイルが出たがっているし、そもそもエムバペはどんなメガクラブでも活躍できる」「信じられない少年!」――

 確かにエムバペは尋常ではない。

 ピッチ上ではもちろん、撒かれた一筋の火薬がババババと連爆するようなドリブルをみせ、ゴールも多彩なのが特徴だ。昔のアンリそっくりに左からスペースに驀進して華麗なゴールを決めるかと思えば、ゴール前でこぼれ球を巧みに入れることもできてしまう。「出場するたび僕が何かをしなくちゃと期待されてきたから、そうするようにしているんだよね」と本人。それでできてしまうのだから、恐ろしい。

 ピッチ外でも同じだ。爽やかな18歳なのに、語る内容は30歳のベテランのように成熟しているのである。フランス代表初キャップを飾った夜も、私はミックスゾーンで怪童を待ち構えた。するとすらすらと、しかし傲慢さの欠片もなく、こう言った。「これが代表4、5回目の試合だったら、とても満足とは言えないだろう。でも今日は初キャップなので一応満足としたい」

 次いでレアルについて聞かれたときも、こうだった。「確かにレアルはビッグクラブで、夢のクラブだよ。でも当面の僕はモネガスク(モナコ人)。レアルというのは、自己の芸術の頂点で行くクラブだと思うんだ。そしていまの僕はまだ自己の芸術の頂点にはない」

 これらの言葉はフランス人を驚嘆させた。「すぐに調子に乗る若造とは別ものだ!」、と感じたからである。その後エムバペは、やはり心変わりしたのだろうか? それとも――。

 5月6日、煌めきのモナコは、CLユベントス戦敗北をさっさと忘れて、L1第36節ナンシー戦を3−0で制し、フランスチャンピオンのタイトルに大きく近づいた。エムバペは先発しなかった。ところが82分に投入される。すると敵地ナンシーの観客が拍手で迎えた。フランス中が愛しているのである。そしてたった4分後には、右サイドから長い足を駆使してクロス発射。トマ・レマールのゴールをアシストしてしまった。ジャルディム監督は否定しているが、この“82分投入”はどうも、CL準決勝セカンドレグ(ユベントスvsモナコ)を意識して休ませた気配である。

 ホーム戦を0−2で落としたチームがアウェー戦で逆転する確率は、統計上4%弱。成功すれば、快挙どころか、奇跡である。だから実のところフランス人は誰も信じていない。だがエムバペは・・・、やる気である。父のようなブッフォンのマウスに突進したくてウズウズしているのだ。とはいえ、CL決勝進出は無理でも、エムバペはすでに世界中の注目の的になっている。

 モナコ公国のプリンス、アルベール皇子は、“スタッド・ルイIIのプリンス”を慰留できるだろうか。それとも早くも王(レアル)に行ってしまうのだろうか。いずれにせよこの夏のフランスは、怪童の行方で大騒ぎになりそうだ。(結城麻里=パリ通信員)

[ 2017年5月14日 06:00 ]

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