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【コラム】海外通信員

長友 絶対やってはいけないミス インテリスタ「今すぐインテルから出て行け」

[ 2017年5月6日 06:00 ]

ナポリ戦の後半、競り合うインテル・ミラノの長友(左)
Photo By 共同

 いやはや、こっぴどい叩かれ方をしていた。

 30日のインテル対ナポリ戦でミスキックから失点に絡んだインテルDF長友佑都のことだ。前半43分、ナポリFWロレンツォ・インシーニエが放った左クロスに対し、逆サイドから絞ってポジションを取り、クリアを図ろうとした。コースには入ったし、ポジショニングも遅れていない。手前でバウンドしたとはいえ、クリアは難しくないようなボールに思われた。ところが右足のキックは、どういうわけかちょんと後ろに行くだけだった。これを背後からホセ・マリア・カジェホンにかっさらわれて、シュートを決められてしまった。擁護のしようのないミスだ。

 当然、地元の人々はこのミスを許さなかった。地元紙の採点は軒並み4と最低点、「言語道断」(トゥットスポルト)「体重オーバーのオヤジ連中が公園の草サッカーでやるようなミス」(ガゼッタ・デッロスポルト)と寸評には遠慮がなかった。ネットでも、SNSではコラ画像が連発。他クラブのサポーターは笑い、インテリスタは「今すぐインテルから出て行け」と怒る。UEFAチャンピオンズリーグの出場権獲得を今シーズンも逃したインテルが今もビッグクラブなのか、という議論はさておき、彼らを取り巻く環境というものはこういうものである。

 ミスは起こりうること。それをそこまで怒るとはイタリア人はなんと狭量な連中か、と考える向きもあるかもしれない。ただ結果のためなら守備に徹することもいとわないイタリアサッカーの伝統からも分かる通り、彼らにとっては結果が全て。結果に繋がらないプレイは評価しないし、ましてや負けに関わるのはありえないのだ。これが選手の限界を熟知している下位チームのファンならば、ピッチ上で頑張れば応援してくれる雰囲気もある。だが強豪チームのスタジアムでは、少し不安定なプレイをしただけでもブーイングの対象となる。

 ピッチで戦っているのは選手なのだから、むしろなんで応援しないのだとファンに質問すると、彼らはこう返す。

 「いや、チームが勝つところを観るために、月々の収入に苦労するファンがなけなしの金を払って応援している。しかもオレたちインテリスタは長年耐えた。ピッチで結果を出せないクソどもがあくまで悪いというのに、サポーターも悪いというのは理解できない。三冠(2009−10シーズン)の時にはあんなに素晴らしい選手たちを揃えていたのに、今がアレじゃ文句も言いたくなるだろう」と。

 実際ファンが全国区のインテルやミランぐらいになると、休みを取って遠くから足を運んでくるファンもいる。そこで負けを見せられても自己責任ではないのかというツッコミはさておき、彼らにとって負けにつながるミスは試合の一部分ではなく、起こってはならない失態なのだ。

 ナポリ戦での長友については冷静な意見もあって「やられ気味だったというが、そもそも彼は戦術的に数的不利にさらされていた」「長友のあのミスに隠れてはいるが、残りの時間でチャンスをまったく決められなかったことをむしろ問題とするべきではないのか」という論調も地元メディアにはあった。ただ残念ながら長友にとって、あの手のミスは初めてではない。

 11月のUEFAヨーロッパリーグ第5戦サウザンプトン戦でも、若干不運だったとはいえ左クロスのイレギュラーを処理し損ねてオウンゴールにした。さらには13年12月のナポリ戦で、エリア内に上がったボールをヘッドで中央に折り返してしまい、それをゴンサロ・イグアインにみすみす拾われてシュートを打たれた。エリア内に追い込まれた時に余裕がない、というのはセリエAのDFとしてはやはりまずい。加えて、似たようなことを繰り返していればやはり文句も言われるだろう。

 現在、インテルのDFラインには故障者が続出している。7日のジェノア戦でも、ステファノ・ピオーリ監督がシステムの変更を考えない限りは長友が出されるだろう。そこでのミスは、本当に厳禁になる。(神尾光臣=イタリア通信員)

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