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【コラム】海外通信員

育成強化中のイタリア 「次かその次のW杯では我われが勝つ」

[ 2017年3月18日 05:45 ]

 先月の2月18日、イタリア代表のベントゥーラ監督はイタリアA代表の強化合宿を行なった。メンバーは、若手中心だ。代表で主力となっている面々は呼ばれなかったが、意外にもこれは注目を集めた。ミランの下部組織出身で主力に定着した19歳のMFロカテッリに、DFカルダーラやスピナッツォーラ、FWペターニャなど先日のコラムでも紹介した好調アタランタ組。そのアタランタから1月にインテルへ移籍したMFガリアルディーニも、そしてこれまで代表とはあまり縁のなかったサッスオーロFWベラルディも呼ばれている。皆リーグで活躍をしている面々なのだ。

 これまで、イタリア代表が人材難にあえいでいたということは、このコラムの筆者担当記事で書かせていただいた通りである。外国人選手に押され、イタリア人選手に出場機会が与えられえなくなる。かつてプランデッリは「普通はクラブで育った選手が代表に呼ばれるというプロセスをたどるが、今は我われ代表チームが(クラブで出場機会のない)若手を育てる原動力となっている」とこぼした。コンテ監督の時代には、帰化選手をイタリア代表として使ったことが物議を醸した。ところが今季、急に風向きが変わっている。若手選手が選手が、セリエAのトップチームで出場機会を得るようになってきているのだ。

 EURO2016にも出場したフィオレンティーナFWベルナルデスキ、第28節終了の時点で22ゴールを挙げて得点ランキング首位にいるトリノFWベロッティ、18歳になったばかりのミランGKドンナルンマは今回の合宿に呼ばれていなかったが、彼らはすでにA代表招集の常連だ。そして合宿で呼ばれた中でも、各クラブで主力の座を勝ち取ってリーグで名を挙げている選手は多くいた。今季はビッグクラブとの試合で数々のゴールを決めているサッスオーロMFペレグリーニに、そのサッスオーロのディ・フランチェスコ監督の実施であるフェデリコも、活躍が評価されて代表合宿入りを果たした。また合宿には呼ばれなかったが、バルサのテージョからポジションを奪ったMFキエーザ(パルマやフィオレンティーナで活躍したエンリコ・キエーザの実子)なども派手な活躍を見せている。彼も19歳だ。

 セリエAにおいて若手の台頭がブームになっていることには、2つの背景事情があると言える。一つは2010年W杯南ア大会失敗後に、年代別代表も含めて人材育成プランを練り直したイタリアサッカー協会の努力がやっと身を結んできたこと。昨夏のU−19欧州選手権で準優勝を果たしたロカテッリをはじめとし、台頭してきている選手の多くはこの5、6年の間に何らかの形で年代別代表で”発掘”された選手が多い。

 そしてもう一つは、時同じくして各クラブが強化方針を自前の選手育成に切り替えたことだ。他国のリーグに経済力でついてこれなくなり、選手獲得の競合で負けるようになったイタリア勢は、不可逆的に人材育成に舵を切った。「ミランは若いイタリア人で」というベルルスコーニ名誉会長の希望に添い、ミランは下部組織を強化。インテルやラツィオなども、積極的に人材育成へ資金を投下している。その他ビッグクラブから地方の中小クラブに到るまでの多くのクラブが、若手育成の設備投資を拡充する計画を持っている。2月の合宿ではトリノの下部組織生え抜きであるDFバッレーカや、ペスカーラの下部組織で育ちキエーボで活躍する長身FWイングレーゼらが昌守されていたが、彼らはそうしたムーブメントの中で見出され、主力として活躍している選手だ。

 「人材は出てきている。次かその次のW杯では我われが勝つぞ」。ある地元のサッカーファンはそう息巻いていた。さて、その言葉通りに復興なるか。(神尾光臣=イタリア通信員)

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