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ベンゼマ批判 マドリーの“9番”という点取り屋とは

レアル・マドリードのFWベンゼマ(左)
Photo By AP

 レアル・マドリード監督ジネディーヌ・ジダンの記者会見で、カリム・ベンゼマは最も名が挙がる選手の一人だ。フランス人指揮官に投げかけられる質問の趣旨は、ベンゼマが“9番”という点取り屋の役割をしっかりと務めているかどうか、また同胞であるから特別扱いしているのではないかといったもの。ジダンはそんな問いかけがある度にベンゼマという選手の能力の高さを強調し、扱いが違うとすればフランス語でコミュニケーションを取ることだけと返している。

 そう、レアル本拠地サンティアゴ・ベルナベウで、チームのパフォーマンスが悪かったりゴールがなかなか決まらなかったりすると、ベンゼマは決まって槍玉に挙げられる。その理由としては、ポジションを争うアルバロ・モラタのようにスペイン人でも下部組織出身でもないことも挙げられる。が、最たる要因はレアルで愛されてきたストライカー像を体現していないためだろう。

 サンティジャーナ、イバン・サモラーノ、ウーゴ・サンチェス、フェルナンド・モリエンテス、ラウール・ゴンサレス、ロナウドら、技術はもちろんのこと、魂でボールを枠に押し込んできたレアル歴代のストライカーから比べると、ベンゼマはゴールへの執着が見えず、冷めているように映る。決定機を逸しても悔しがらず、そのために観客から指笛が吹かれ、試合後と次の試合前の会見で監督に質問が飛ぶ。それこそが、ベンゼマのレアル入団直後から確立された循環である。しかし、やはりベンゼマは背番号9を背負うことで損をしているのではないか。彼はどうあっても純粋な9番になり得ない。その創造性によって周囲を生かし、それでいてゴールも決めてしまえる選手なのだから。そしてその創造性は、“冷めている”からこそ備わるものなのだろう。

 ガレス・ベイル、クリスティアーノ・ロナウドとともに“BBC”を形成するベンゼマだが、彼なくしてはそのトリオは成立しない。フランス人FWは前線から下がってルカ・モドリッチ、トニ・クロースらの攻撃の展開を助け、ベイル、C・ロナウドがペナルティーエリア内に切れ込んでゴールを狙う際にはスペースをつくり出す役目も担う。エゴイスティックにゴールを狙うのではなく、守備から攻撃のトランジションにおいて各チームメートの相棒のように振る舞い、交通整理を行うのが彼の主要な仕事なのだ。ジダンが最も評価しているのも、その点にほかならない。

 「自分の選手が批判を浴びせられれば、もちろん心が傷む。カリムにはゴールを決めてほしいし、私からも決めてくれと言っている。だが彼の最も重要な仕事は得点ではないんだ。カリムの仕事ぶりはじつに素晴らしく、彼がピッチに立っていれば、ほかの選手のプレーだって良くなる。彼は自らゴールを決められるほか、チームメートのゴールだって導ける選手なんだよ」

 3月5日に行われたリーガエスパニョーラ第26節エイバル戦(4−1)は、彼が真骨頂を見せた試合だった。ベイル&C・ロナウドが不在だったこの一戦、ベンゼマは前半14分にマルコ・アセンシオの折り返しから先制点を決めると、25分にはハメス・ロドリゲスのFKに右足アウトサイドで合わせて2点目を記録。さらに30分にはグラウンダーのクロスでハメスの得点をお膳立てし、後半15分には自陣からピンポイントの浮き球を放ちアセンシオが決めたゴールの起点となっている。

 その中でも2ゴール目と4点目のきっかけとなった浮き球は、普通の9番のプレーとは一線を画す冷静さと技術が光った芸術品。まさしく、ベンゼマの印が刻まれていた。

 ベンゼマの批判の循環は、これからも存在し続けるはず。ベルナベウのブーイングは真っ当なスペインメディア及び記者が彼という選手の価値を訴え続けても、一向になくならないのだから。しかし、それでもこの前線の芸術家は、寡黙に、冷ややかに作品を発表し続けていく。ジダンはベンゼマを疑問視する意見や質問に飽き飽きしている様子だが、同じ言葉を繰り返して彼の作品を守れるならば、対価としては安いに違いない。(江間慎一郎=マドリード通信員)

[ 2017年3月11日 07:30 ]

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