梅山修氏 J2新潟、後半戦失速の要因は前線からのプレスに苦闘と得点力の低下
【元アルビ・梅山チェック特別編】最終節は直近8戦負けなしの町田に対し、6割近いボール保持率を記録し、積み上げてきたスタイルを表現した新潟だったが、今季最少のシュート3本(町田は10本)で0―2の敗戦。新潟のみならず、サッカー界のレジェンド田中達也とアルベルト監督のラストゲームを勝利で飾ることはできなかった。
アルベルト監督2年目の今季は、開幕から13戦無敗で首位を快走。ボールを支配することで試合も支配すると掲げたコンセプトをピッチ上で明確に実践してみせた。前半戦の21試合終了時点では、40得点、19失点で1試合あたり1・9得点&0・9失点(優勝した磐田は同1・8得点&1失点)と優勝ペースだった。
チーム構成を見てもボールを保持する上で土台となるボランチとDF陣は、開幕から最終戦まで年間を通してほぼ同じメンバーで戦えており安定していた。このセンターラインで言うと、トップ下に位置する高木がリーグ1位の14アシストを記録。彼が高い位置でプレーできた背景に、ボランチやCBの安定があったことも見逃せない点だ。また高木は、ファウルを受けた数も131(第41節終了時)で断然のリーグ1位でありながら、全試合に出場した実績は特筆すべき事実だ(2位は磐田の山田&ルキアンの79、同)。
とはいえ、リーグ後半戦に入ると、昨年も見られた終盤の失速をほうふつさせるように負けや引き分けが増え、ゆっくりと順位も下げて行った。
その失速の要因は主に2つが考えられる。
一つは、前線からプレッシャーをかけてくるチームが増えたが、その対応に手を焼いたこと。実は好調と思われていた前半にもその傾向は表れていた。具体的には、相手が特にボランチへのパスコースを消してCBに奪いにいく。もしくはCBからSBに誘導して奪う。あるいはSBへのパスコースを消して中の密集に運ばせて奪う、など。チームによっていくつかの手段が取られていたが、第13節のホーム松本戦(0―0)が他チームへのお手本となったのではないかと考えられる。
実際、そのあたりから、ポゼッション=新潟をリスペクトして引いて守るチームはほとんどなくなり、勝点3を積み上げるペースが明らかに落ちている。この点で、守備だけでなく攻撃においてもいかにCBが重要なポジションであるかが分かる。また守備のスタート者はFWであり、攻撃のスタート者はDF(GK)であると言われるゆえんでもある。
二つ目は得点の減少。前半戦の40得点に対し、後半戦は21得点と約半分に減っている。長短のパスを織り交ぜ、サイドの深い位置まで侵入するのだが、そこまで運んでいったん攻撃のスピードがダウンするシーンが散見された。この要因はボールを相手に渡したくないという強い意識が、勝負のボール(五分五分のボール)を躊躇(ちゅうちょ)させたのかもしれない。引いてゴール前を固めるチームが増えたのではなく、攻撃のスピードダウンが相手に守備に戻る時間と状況をつくり出していた。
一般的にクロスからの得点は20~30%であるが、攻撃のスピードダウンによるクロス数の減少も得点力の下がった一因であったと言える。結果的に夏に加入したクロスからの得点を得意とするFW高沢をチームとして生かすことができなかった。
ただ、監督ができることはどのようにゴールを守り、どのようにゴールを奪うかまでで、実際にゴールネットを揺らすことはできない。つまり戦術でチャンスはつくれても、ゴールに蹴り込むのは選手である。数多くのチャンスを演出したという意味では、アルベルト監督が築いたスタイルはこの2年でチームに浸透したと言える。
負けているチームが試合終盤に見せるパワープレーのように、目先の手っ取り早い得点と勝ち点を取るために長いボールを蹴り込む方法、自陣で守備を固めてカウンターを狙う方法、さまざまな方法がある中で、この2年間、新潟はボールを大切に、そして確実に運ぶ方法を選択してきた。しかも勝とうが負けようがこの方法は変えないという哲学を掲げてきた。そこに多くのサポーターも共感し、ともに成長してきた。
日本独特の成長プロセスを表す「守破離」に照らすと、この2年でスタイルの基準「守」は身に付けた。次のステップは「破」。「守」に基づいた、人の立ち位置やボールの動かし方に対応された時に、その基準をいい意味で破っていく創造的な成長に期待したい。
また、J1昇格だけでなくJ1で戦い続けるチームに向けて、どんなプレーモデルをどんなプロセスで成長させていくのか。地域の象徴としてのアルビレックス新潟に注目である。(元アルビレックス新潟DF)
◇梅山 修(うめやま・おさむ)1973年(昭48)8月16日生まれ、埼玉県出身の48歳。福岡、FC東京、V川崎、湘南を経て04年に新潟に移籍。引退翌年の07年から15年まで新潟市議会議員を務め、現在はアルティスタ浅間のクラブアドバイザーのほか、指導者、解説者として多岐にわたり活躍中。生涯学習開発財団認定プロフェッショナルコーチ。
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